研究実績の概要 |
組織局所のレニン-アンジオテンシン(R-A)系,特に1型アンジオテンシン受容体(AT1受容体)の過剰な活性化は,心腎連関症候群の発症・進展に関与する.本研究では,AT1受容体への直接結合因子であるATRAP(AT1 receptor-associated protein) について,『マクロファージにおけるATRAP発現調節異常が心腎連関症候群の発症・進展に関与し,マクロファージATRAP発現の制御により心腎連関症候群を克服できるか』との仮説を検証することを目的としている.心腎連関モデル動物,ATRAP遺伝子改変動物およびヒト白血球検体などを用いて,心腎連関症候群の発症・進展における白血球・免疫細胞でのATRAPの病態生理学的意義を生体レベルで明らかにし,ATRAPに着目した新規分子標的治療開発に向けた多面的な基礎的知見を得ることを目指す. 心腎連関モデルマウスとしてANS(angiotensin II(Ang II) infusion, Nephrectomy, and Salt loading)マウスを作製して,比較検討を行った.ANSモデルにより心不全・腎障害が惹起されることに加え,ARNIを投与することで白血球・免疫細胞のATRAPを介して心腎障害の抑制されていることが示唆された.以上より,マクロファージをはじめとした白血球・免疫細胞におけるATRAPは,心腎連関症候群に対する新規治療標的の可能性があると考えられた. さらに現在,SGLT2阻害薬投与による心腎障害の抑制効果および白血球・免疫細胞のATRAPの関与について検討中である.
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