研究課題/領域番号 |
22K20904
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
柴田 明子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 特別研究員 (70964245)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | RTTモデルマウス / 皮質ネットワーク異常 / マクロイメージング / RabΔG経シナプストレーシング / シナプスの形態学的観察 / FingR |
研究実績の概要 |
本研究では、Rett症候群(RTT)モデルマウスを用い、PV+細胞が皮質ネットワーク異常にどのように関わるのか明らかにし、新たな介入方法を考案することを目的としている。 課題1に関しては、4か月のRTTモデルマウスと野生型マウスを用いて、安静時暗所、運動時における皮質領域間のCaイメージングのデータの集積を行った。 課題2①に関しては、FingRのDIOベクターAAV-DIO-PSD95.FingR-eGFP、AAV-DIO-Gephyrin.FingR-mScarletを作成し、DIO-TagBFP2、DIO-TagGFP2-CAAXとともにCamK2-Cre、PV-Cre、およびSST-CreマウスのM2領域に注入することで、各神経細胞の形態と樹状突起上におけるPSD95-FingR-eGFP、Gephyrin-FingR-mScarletの観察に成功している。さらに、MeCP2の蛍光免疫染色も行うことで、MeCP2発現細胞と非発現細胞の判別も行った。さらに蛍光強度の強いFingRとして、DIO-PSD95.FingR-mNeonGreenの作成も行った。課題2②に関しては、RTTモデルマウスと野生型マウスのM2にAAV-CamK2-Creを注入し、組み換え狂犬病ウイルス(RabVΔG)を用いた経シナプストレーシングを行うことで、M2錐体細胞への投射ニューロンの全脳マッピングを行い、その分布を2群間で比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題2①については、研究計画にあるPV+細胞ではなく、まずはM2の錐体細胞への投射ニューロンを解析となった。RTTや神経発達障害においては、興奮性神経細胞、抑制性神経細胞両者のバランスが重要であり、神経細胞の数としては錐体細胞が主なのでまずは錐体細胞の解析から開始している。
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今後の研究の推進方策 |
課題1に関してはモデルマウス、野生型マウスのデータ集積を続けるとともに、データ解析を行い2群それぞれの皮質間のコネクティビティを月齢、運動状態、視覚刺激の有無などに分けて解析していく予定である。 課題2①については、得られた結果が再現性があるかサンプル数を加えて解析するとともに、異なる月齢のマウスを用いて、発達時期における変化も検討する。PV+細胞への投射ニューロンの分布や投射ニューロンにおけるMeCP2発現を解析することにより、錐体細胞の解析における結果と比較し、RTTの病態機序におけるPV+細胞の役割の解明を目指す。課題2②については、作成したFingRを用いて、細胞腫特異的に神経細胞のシナプスを可視化し、立体的に観察することを目指す。大脳皮質の神経細胞は、3次元的に複雑な構造をもち、その構造を可視化するためには、組織の深部まで均一にイメージングすることが必要である。そこで、Ab/Scale法により組織を透明化したうえで、2光子顕微鏡によるイメージングを行う。取得した画像は画像解析ソフトImarisを用いて解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
課題1に関しては次年度にさらにマウス個体数を増やしてマクロイメージング、解析を進めていく予定である。課題2に関しては、作成したDIO-FingRベクターによりシナプスがラベルされるか予備実験を行って検討していた。次年度は残った実験費用を用いて、実際に細胞特異的にシナプスをラベルし、透明化を行って二光子顕微鏡で観察を行っていく。組み換え狂犬病ウイルスによる経シナプストレーシングの実験についても、次年度さらに マウス個体数を増やして解析を進めていく予定である。 課題3の介入実験は課題1,2の結果を踏まえて行う必要があるため、今年度はまず課題1,2について進めた。課題3にかかる費用に関しては次年度に残している。
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