先天性免疫異常症は、遺伝子の異常により生まれながらに免疫機構が異常を起こす稀少難病疾患の総称で、原因遺伝子同定による早期の診断・治療が必要である。しかしながら、既知の遺伝子に異常がない、未診断の先天性免疫異常症はいまだ数多く存在し、このような症例では適切な治療介入の遅れが致死的となることがあるため、原因遺伝子の解明が強く望まれる。 先天性免疫異常症の新規原因遺伝子同定を目的として、新規症例8例、再解析症例121例を収集した。新規症例は全エクソームシークエンスとその解析を行った。解析は、国立国際医療研究センター疾患ゲノム研究部で樹立された独自の全エクソーム解析プラットフォームを用い、先天性免疫異常症の新規責任候補遺伝子Xのバリアントを同定した。Xの免疫機構に関わる機能はいまだ解析がされておらず、Xの遺伝子変異により免疫不全症が引き起こされるメカニズムの解析を開始した。遺伝子Xの野生型および患者変異型の強制発現ベクターを作成し、細胞株に強制的に発現させることで、Xが変異型では異常なダイマー形成を認めることを見出した。リコンビナントタンパク質の作成とクロマトグラフィーによる解析を行い、Xの異常ダイマー形成が、異常なジスルフィド結合の亢進によるものであることを見つけた。これによりXの患者変異による機能異常を明らかにし、この成果を論文投稿中である。再解析症例は全エクソームシークエンスデータと臨床症状データの収集に時間を要したため、詳細な解析は今後の課題として引き続き継続する。
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