研究課題/領域番号 |
22K20908
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岩崎 沙理 北海道大学, 医学研究院, 助教 (60455631)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 空間的トランスクリプトーム / 血管内皮 / 血栓性微小血管症 |
研究実績の概要 |
本研究では、様々な病因で発症する血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy: TMA)の症例について、腎生検組織を用いて、空間的transcriptome解析を行い、病因により差異が見いだされるかを検討する。GeoMX(NanoString社)のプラットフォームを用いて、腎生検組織上の内皮細胞のみからmRNAを抽出し、網羅的な whole transcriptome解析、および網羅的な蛋白解析(nCounter)を行う予定である。 1. 病理学的TMAのうち比較的急性期の内皮細胞傷害像を示す、①TAFRO症候群(血小板減少、全身性浮腫、発熱、骨髄線維化や腎機能障害、臓器腫大を示す全身性炎症性疾患) に伴うTMA、②造血幹細胞移植後TMA、③薬剤性TMA(抗VEGF阻害剤)、④膠原病関連TMA(抗リン脂質抗体症候群等)を2-3例ずつ抽出した。病理組織学的因子、血液検査所見、尿所見、臨床経過や治療反応性について解析し、典型例を確認した。 2. ヒト腎生検組織ホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いて、 GeoMX(NanoString 社)をプラットフォームとする 空間的 transcriptome 解析、およびnCounterを用いた網羅的な蛋白解析を行うための予備実験を開始した。まず、パラフィンブロック品質を確認した。特殊スライドガラスを入手した。予備実験用に、固定条件等の異なる腎生検症例(IgA腎症等)を10例ほど抽出の上、パラフィン切片を接着させ、外注先に提出した。NanoString社の技術者とミーティングの上、遺伝子抽出や蛋白解析を行う関心領域を設定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
パラフィン切片を用いた網羅解析は、外注先であるNanoString社と連絡をとりながら進めている。現段階で、4種類の抗体(CD31, LCA, panCK, 核染)で蛍光染色し、目標となる内皮細胞が同定可能であることを確認し、同スライド上で、網羅解析を行う関心領域を決定できた。現在、関心領域からの遺伝子抽出や解析が行われている。しかしながら、NanoString社において、技術者の退職・途中交代があり、予備実験を開始してから、4ヶ月が経過してしまっており、当初の予定よりも進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現状では、空間的トランスクリプトーム解析および蛋白解析(nCounter)の予備実験まで順調に進行している。今後、予備実験で一定の結果が得られれば、本番用の検体に求められる様々な条件がクリアになる。予備実験の結果を踏まえて、最終的に検討する検体を選定し、貴重なTMA検体を本番用のスライド硝子に貼付し、本番の検討に移行していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた外注検査は予備実験の段階でまだ費用が発生していない。本実験は次年度に行うことになったため、予算を繰り越す。
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