研究実績の概要 |
まず健常者皮膚と全身性強皮症患者の皮膚を用いて、CXCL16の免疫染色を行った。全身性強皮症患者の皮膚において、CXCL16は線維芽細胞でより発現が高かった。次に正常ヒト皮膚線維芽細胞をCXCL16で刺激した。この実験では、転写因子FLI1遺伝子を抑制した細胞を強皮症モデルとして用いた。転写因子FLI1の発現低下はヒトの全身性強皮症患者において疾患との関与が報告されている因子である。正常ヒト皮膚線維芽細胞をCXCL16で単純刺激すると、CXCR6の発現が有意に低下、COL1A1、COL1A2、TGFβ1、SNAI1、ACTA2の発現が有意に上昇した。細胞をFLI1 siRNAで処理しCXCL16で刺激すると、CXCL16、CXCR6、COL1A2、TGFβ1の発現上昇がさらに増強された。CXCL16が線維化関連遺伝子の発現を上昇し、強皮症モデル細胞でさら増強されている可能性が示された。 次に、CXCL16の抑制で皮膚硬化が改善するかマウスを用いて実験を行った。ブレオマイシン誘発強皮症モデルマウスに同時にsiRNAを用いてCXCL16の発現を抑制した。その結果真皮の厚みが薄くなり、各種線維化関連因子(Col1A1, Col1a2, Ctgf, Tgfb1, Snai1, Acta2)の発現も低下した。以上から、CXCL16は強皮症の線維化に関与しており、抑制することで皮膚硬化が改善することが示された。CXCL16は受容体として膜貫通型CXCL16とCXCR6を持つと報告されているが、CXCR6 siRNAを作用させた線維芽細胞では発現が低下することから、線維化関連因子の発現においてはCXCL16-CXCR6の結合が必要だと分かった。また、さらなる細胞内シグナリングの検討によって、CXCL16はSMAD3のリン酸化を促して線維化関連遺伝子の発現を上昇させることが明らかとなった。
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