本研究の目的はアトピー性皮膚炎の治療薬となり得る小分子化合物を見つけることである。特に皮膚の水分蒸散を防いでいるタイトジャンクション、中でも皮膚に多く発現し、機能的役割をもつクローディン1の発現を促進する化合物を探索している。クローディン1の発現調整に免疫抑制を伴わないため従来のアトピー性皮膚炎の治療と異なる新しい作用機序の薬剤が開発可能となる。また、アトピー性皮膚炎だけでなく、皮膚バリア機能の改善を目指した化粧品開発や、高齢者の皮脂欠乏性湿疹に応用が可能であり、市場におけるインパクトが高い。 10000以上あるライブラリー化合物からレポーターアッセイを用いたスクリーニングを行ったが、開始当初は384wellに手動で細胞を播種していた。しかしながら手技によるばらつきが大きくなってしまったため、再度機械による細胞の播種を行う必要があり、予定より若干の遅れが生じている。本年度はJ-publicraライブラリーからの化合物スクリーニングに終始し、12の化合物まで絞ることができた。更に2次スクリーニングとしてmRNA発現量を確認している。その後は化合物の最適化やアトピー性皮膚炎モデルマウスであるVitD3外用マウスやSPADEマウスを用いた治療実験をおこない、治療前後での組織採取、RNAシーケンスなどを行い、アトピー性皮膚炎で重要であるサイトカインであるIL-4/13経路が抑制されているか、などを検討していく。
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