アトピー性皮膚炎は表皮バリア機能の異常、免疫の異常、痒みの異常の3つ異常が元として発症する多因子疾患でありかつ慢性炎症性皮膚疾患である。近年のアトピー性皮膚炎に関わるTh2サイトカインであるIL-4やIL-13をターゲットとした生物学的製剤の登場により、アトピー性皮膚炎の治療にパラダイムシフトが起こっている。また、JAK阻害薬もアトピー性皮膚炎に対して有効であることも明らかになってきたため、これまでの副作用の懸念されるステロイド治療以外の治療選択肢が増えてきた。しかしながら、アトピー性皮膚炎に関わる炎症シグナルは複雑であり詳細なメカニズムは明らかになっていない。表皮特異的IκBζ遺伝子欠損マウスに対するアトピー性皮膚炎の免疫応答性を解析することを着想し、実際に、この表皮特異的IκBζ遺伝子欠損マウスに対して、予備実験としてビタミンD誘導体であるカルシポトリオール(MC903)を耳介に塗布して誘発されるアトピー性皮膚炎モデルを適応したところ、対照マウスと比較して皮膚の炎症反応が増強する結果が得られた。さらにこのアトピー性皮膚炎モデルのおける表皮IκBζ遺伝子の関与する遺伝子を網羅的に探索するために、アトピー性皮膚炎を誘導したのちに表皮特異的IκBζ遺伝子欠損マウスと対照マウスの皮膚から表皮を単離し、RNAを抽出したうえでRNAseqによる遺伝子発現解析を行い、アトピー性皮膚炎に関連する種々の遺伝子群を抽出することができた。この遺伝子群にたいするアトピー性皮膚炎への影響を調べようと準備を進めているなかで、申請者の海外留学が予想より早く決まってしまったため一度研究を中止とした。
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