研究課題/領域番号 |
22K20925
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平野 利忠 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (10965726)
|
研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
キーワード | リプログラミング / 糖尿病 / β細胞 / MYCL / マウスモデル / 再生医療 |
研究実績の概要 |
糖尿病はβ細胞の分泌するインスリンの絶対的あるいは相対的な作用不足によって発症する。β細胞はほとんど自己複製しないことから、β細胞の再生医療が世界中で試みられてきた。当該研究者は本研究に先立ってMYCLリプログラミングによる成熟膵島細胞増殖誘に成功したている。そこで本研究では、膵島細胞におけるMYCLリプログラミングの機序を紐解くことで、より効率的かつ安全性の高い膵島細胞の増殖誘導方法を開発することを目的とした。 1. 膵島細胞における内在性Mycl遺伝子を活性化する因子や経路を明らかにするため、Mycl遺伝子座にルシフェラーゼを組み込んだマウスモデルを作製した。Mycl遺伝子座のプロモーター直下にルシフェラーゼ遺伝子を導入し、また内部標準を検出するため、Rosa26遺伝子座にレニーラルシフェラーゼを導入したES細胞を作製した。Mycl遺伝子は分化とともに発現が低下することから、試験管内でこのES細胞を分化誘導させたところ、ルシフェラーゼ活性も相関して抑制されることを確認した。このES細胞からキメラマウスを作製し、Mycl遺伝子座及びRosa26遺伝子座のそれぞれにおいて生殖系列への移行に成功した。 2. 膵島細胞は出生直後に活発な増殖活性を持つ一方で、その後発生とともに増殖活性を失うことが知られている。当該研究者は出生前後での代謝状態の変化に着目した。Myclが強制発現した膵島細胞において特定の代謝経路を活性化させたところ、検討したところ、Myclと協調して増殖を活性化させることが明らかとなった。実際にRNA-seqを行うことで、代謝経路の活性化により増殖関連遺伝子の活性化も認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、MYCL遺伝子の活性化を標識可能なマウスモデルを作製した。また、出生時期に活性化する代謝経路を活性化させることで、膵島細胞の強烈な増殖誘導を行い、長期間の培養方法の開発にも成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、MYCLリプログラミングによる膵島細胞増殖機構の解明を目指す。 1. 作製したMYCL遺伝子活性を標識可能なマウスモデルより膵島細胞を単離し、低分子化合物によるスクリーニングを行う。得られた結果より、Myclを活性化する因子や経路を同定し、化合物による膵島細胞の増殖誘導も試みる。 2. 活発に増殖した膵島細胞がどれくらいの期間継代可能であるかを評価する。また、増幅した膵島の機能性を評価するために、糖尿病マウスモデルに移植し、血糖値をモニタリングする。またブドウ糖負荷試験も行う。 上記に加え、MYCLリプログラミングの過程で起こるクロマチンの変化(ATAC-seq)やMyclが結合する領域を特定する(CUT&RUN)ことで、膵島細胞の増殖機序を明らかにする。
|