研究課題
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後に少なくとも1/3の患者が悩まされる種々の症状(Post COVID-19 condition:PCC)において最も多くの患者が経験するのが全身倦怠感である。一方で倦怠感は従来の検査では異常所見として検出することができないため定性・定量化が困難である。一方でPCCに伴う倦怠感の重症度は症例によって大きく異なり、数か月で軽快する軽症例から、ときに筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の診断に至る重症例まで存在するため、客観的評価や予後予測に有用な指標を見出すことがPCC診療における課題であった。そこで本研究ではPCC患者の中でも倦怠感を呈する症例やME/CFSに移行する症例の臨床的特徴を解明することを目的とした。当院外来を受診したPCC患者を対象として後方視的検討を行ったところ、ME/CFSの定義を満たすPCC患者では有意にQOL指標の低下を来しており、網羅的な血液・生化学的指標の解析では単独で血清フェリチン高値がME/CFSを特徴付ける指標として抽出された。従来のME/CFSでは鉄欠乏などの病態から本研究結果とは逆にフェリチンは低下することが一般的と考えられている。フェリチンの上昇がPCC特有の病態を反映しているものであるかどうか、内分泌・代謝系との関連性も意識しながら、PCC後のME/CFSの診断やME/CFSへの移行を予測する指標としての有用性を次年度にかけて追加検討していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
2年間で計画した研究のうち、現在までのところ概ね計画通りの研究を進めることができている。想定通りの患者数を組み入れることができている。
PCCの数多ある他の症状と比較して真に倦怠感がQOL指標の低下と関連しているのかどうか検討が必要であり、内分泌・代謝系との寒冷性も含めて検討することでその数値と病態との関連や、ME/CFS診断や予後予測に有効な具体的フェリチン値のカットオフについても今後解析を行い、それらを論文としてまとめたいと考えている。
掲載予定であった論文掲載料の執行について次年度へ持ち越すこととなったため。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Medicina
巻: 59 ページ: 261~261
10.3390/medicina59020261
Endocrine Journal
巻: 69 ページ: 1357~1357
10.1507/endocrj.EJ22-0459