研究課題
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後に少なくとも1/3の患者が悩まされる種々の症状(Post COVID-19 condition:PCC)の病態については未解明な部分も多く、特異的治療も確立されていないのが現状である。少なくとも半分程度と多くの患者が経験するのが、本研究のテーマとしている全身倦怠感である。定性・定量化が困難である一方で、その重症度は症例によって大きく異なっており、数か月で軽快する軽症例から、ときに筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の診断に至る重症例まで存在しているのが難しいところである。その客観的な評価や予後予測に有用な指標を見出すことがPCC診療における課題であった。本研究ではPCC患者のうち、倦怠感を呈する症例やME/CFSに移行する症例の臨床的特徴の解明を目的とした。岡山大学病院に研究者らが発案して設置したPCC専門外来であるコロナ・アフターケア外来を受診した患者を対象として後方視的検討を行った。ME/CFSの定義を満たすPCC患者では有意にQOL指標の低下を来しており、網羅的な血液・生化学的指標の解析では、特に女性において血清フェリチンがME/CFSを特徴付ける指標として抽出された。従来のME/CFSでは鉄欠乏などの病態からむしろフェリチンは低下することとは矛盾した結果であり追加検討すると、成長ホルモンやインスリン様成長因子I(IGF-I)の低下がME/CFSにおけるフェリチン上昇に関連することを明らかにでき、当科からの既報とも併せて少なくとも部分的にはPCCにおける倦怠感の病態に内分泌学的機序も関与している可能性が示唆された。また多変量解析では、PCCにおける倦怠感は、頭痛や不眠などとともに単独でPCC患者のQOLを有意に低下させる症状であることも明らかとなり、倦怠感を診断・治療する意義と考えられた。
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