ステロイド抵抗性急性GVHDの制御は現在も予後不良である。移植後のTregの不安定さに起因する免疫バランスの不均衡が、過剰な同種免疫反応を生む原因の一つであると考えれる。 急性GVHDモデルマウスとしてジフテリアトキシン投与によってTregを除去でき、かつGFPでTregを識別できるDEREGマウスをドナー、B6D2F1をレシピエントとして用いる骨髄移植モデルを作製した。ジフテリアトキシンを投与し、Tregを除去したDEREGマウスから移植片を作成し、放射線照射による骨髄破壊処置を施したB6D2F1マウスに骨髄移植を行った。レシピエントにはITK阻害薬もしくはvehicleを移植前日から移植後13日目まで連日内服させた。有意差は見られないものの、ITK阻害薬投与により生存期間の短縮がみられた。これは仮説とは相反する結果でありなぜこのようなことが起こるのか、in vitroでの実験を追加した。B6マウスからCD4陽性細胞を分離し、Tregを含む分画とそれ以外の分画に分け、それぞれをITK阻害薬を添加した培地内で同種抗原存在下の元で培養を行った。この結果、Tregを含む分画ではIFNγ産生能がITK阻害薬濃度依存性に低下したが、Tregを含まない分画ではこの効果は見られなかった。以上の結果から、同種造血幹細胞移植後早期にはITK阻害薬の効果は移植片内のTregに依存する可能性が示唆された。この結果はITK阻害薬によるGVHD抑制効果を担保する為に重要な発見であり、今後の臨床応用に向けて大きな発見である。
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