研究課題
疫学研究において、脂質摂取量と肥満には関連が示されている。げっ歯類でも高脂肪餌の給餌は一般的な肥満症モデルの作製法であるが、脂質の過量摂取が肥満を誘導する機序は未だほとんど分かっていない。近年、肥満の病因として視床下部局所炎症が注目されている。また、脂肪酸の中でも、リノール酸(LA)は体内でアラキドン酸(AA)に変換され、プロスタグランジン(PG)等の炎症惹起性の脂質メディエーターの合成基質となる。本研究では、AAや脂質メディエーターの合成酵素の遺伝学的操作により、LA-AA-PG経路が視床下部局所炎症や肥満発症に及ぼす影響を解明する。まず、マウスにLA含有率の高い餌(高LA餌)を給餌したところ、低LA餌に比べ、視床下部のAAやPGE2含量の増加、炎症性サイトカインの遺伝子発現の増加を観察した。次に、LAからAAを合成する際に必須のFatty acid desaturase2(FADS2)の全身ノックアウト(KO)マウスを用い、LA-AA-PG経路を阻害した際の、視床下部炎症や体重を観察する予定とした。FADS2 KOマウスの受精卵を順天堂大より供与いただき、名古屋市立大にて偽妊娠マウスに胚移植を行った。出生仔に対するPCRで、FADS2 KOマウスの存在を確認した。その後は、FADS2 KOマウスに高LA餌を給餌し、摂餌量、体重変化を観察した上で、視床下部の脂肪酸エステルや脂質メディエーターを網羅的に分析し、炎症性サイトカインの遺伝子発現を解析する予定であった。しかし、出生仔への喰殺や育児放棄があり、解析に必要な十分数の仔を得ることが困難であった。ゆえに、肥満発症や視床下部炎症におけるLA-AA-PG代謝経路の意義に関する種々の検討において、FADS2 KOマウスを用いた本研究では遅延を生じている。現在、繁殖状況の改善にむけ、餌や飼育環境など積極的な工夫を行っている。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 694 ページ: 149413~149413
10.1016/j.bbrc.2023.149413