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2022 年度 実施状況報告書

胎児発育不全における腸管機能障害をもたらす分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K20935
研究機関東京大学

研究代表者

市瀬 茉里  東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60954849)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2024-03-31
キーワード胎児発育不全 / 消化管機能 / 妊娠高血圧腎症
研究実績の概要

胎児発育不全(fetal growth restriction: FGR)は、胎盤機能不全を主たる原因とし、新生児期の消化管機能障害や成人期の生活習慣病との関連が知られている。腸管は、生後の栄養摂取において中核的機能を担う臓器であるが、FGRにおける腸管の組織・分子学的異常については、十分な解明がされていない。腸管免疫系の過剰反応・腸管蠕動運動低下は、FGRで生じやすい壊死性腸炎の原因とされており、腸管神経系と免疫系の相互作用による炎症の制御が関係する可能性がある。
研究の目的は、今まで十分な解明が進んでいない、FGRをもたらす子宮内環境が児の腸管に与える影響を、組織・分子学的レベルで解明することを目的にして、FGR・妊娠高血圧腎症を呈するモデルマウスを作成し、その胎仔小腸を摘出し、遺伝子発現をreal-time PCRで比較を行なった。
FGR胎仔小腸では、コントロールマウス胎仔小腸よりも、低酸素に応答して上昇するhypoxia inducible factor-1α(HIF-1α)が増加し、IL17a, TNFα, IL1βなどの炎症性サイトカインの増加、上皮細胞の分化に関連する遺伝子の変動を認めた。腸管神経系も免疫系と相互作用し、炎症を惹起しやすい原因となっている可能性があるが、少なくともreal-time PCRではニューロンのマーカーとなる遺伝子の発現に変化を認めなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

FGRモデルマウスの作成は予定通りに進行し、胎仔real-timePCRを行い、遺伝子発現の変動を確認することができた。組織学的検討・網羅的解析へ進む基盤となったと考える。

今後の研究の推進方策

FGR胎仔小腸では、コントロールマウス胎仔小腸からRNAを採取し、RNAseqによって網羅的遺伝子発現解析を予定している。また、免疫組織学的染色を行い、FGRマウスで消化管上皮分化マーカーや神経・間質細胞など構成細胞レベルで量的変化を認めるか検証を行う。
胎仔小腸間質細胞の分子学的特徴を表す過去のRNAseqデータと比較し、小腸間質細胞に発現し、FGRによって変動する遺伝子を抽出し、細胞間クロストークを媒介する分泌蛋白に注目して、治療標的候補分子の選定を行う。さらに、免疫染色やin situ hybridizationを用いて、候補分子の組織内での局在を確認する。
腸管神経細胞のin vitroでのモデルとして、腸管神経細胞の起源の一部とされているDRG (dorsal root ganglion)ニューロンを新生仔マウスから採取し、候補分子を添加する、あるいはその受容体をsiRNAでknock downすることで、腸管マクロファージ増殖を促すCSF1のmRNA発現が変動するかqPCRで検証を行う。候補分子のリコンビナント蛋白または、antagonist・中和抗体をFGRモデル新生仔マウスの腹腔内に投与し、①で認めた体重の変化や組織学的変化に対する効果を検証する。

次年度使用額が生じた理由

予算が必要なRNAseq解析の支払いが、次年度になったため、初年度の必要額は抑制された。また、マウス飼育費用については、今年度分については、他のプロジェクトと共有した目的で作成した妊娠高血圧腎症モデルマウスを用いたために、当該予算からの支出とはならなかった。

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公開日: 2023-12-25  

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