研究課題
胎児発育不全(fetal growth restriction: FGR)は、胎盤機能不全を主たる原因とし、新生児期の消化管機能障害や成人期の生活習慣病との関連が知られている。腸管は、生後の栄養摂取において中核的機能を担う臓器であるが、FGRにおける腸管の組織・分子学的異常については、十分な解明がされていない。腸管機能障害の最重症型である壊死性腸炎については、その原因が臨床的・基礎的に研究されてきた。今回我々は、胎便関連性イレウス・限局性小腸腸穿孔・NECを包括し広義の腸管機能障害と定義し、119例の早産児のうち22例(18.5%)に腸管機能障害を認め、FGRは腸管機能障害群で有意に頻度が高い(p=0.045 OR 2.67)ことを示した。また、FGR・妊娠高血圧腎症を呈するモデルマウスを作成し、その胎仔小腸を摘出した。FGRマウスではコントロールマウスに比して、腸管の長さが短く、免疫染色の結果、腸管上皮分泌細胞が少なく、Ki67陽性の増殖能を有する構成細胞の分布から、未熟な状況であることが確認された。さらに、RNAseqにより網羅的遺伝子発現解析を行なった。その結果同定された226個の発現が異なる遺伝子に対してpathway解析を行い、ラクトトランスフェリンをはじめとする腸管免疫や外部抗原への粘膜免疫に関与する遺伝子がFGRマウスでは低下していることが明らかになった。FGR及びコントロールマウスに腸炎を起こし、組織学的障害に差が出るか、RNAseqで同定された候補分子による治療効果を検証している。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件) 学会発表 (1件)
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