脳死ドナーの少ない本邦において拡大基準ドナーから臓器の有効活用の実現には早期移植肺機能不全(PGD)発症のリスクに対する治療戦略の確立が求められる.その1手段として移植肺再還流直後に治療介入する『Combined VA-VPA ECMO法』を考案しその有効性を検討する研究である. 前年度時点でECMO回路の確立に必要な,ブタ実験における肺動脈へのカニュレーション技術に関しては既に確立できており、今年度はCombined VA-VPA ECMOの技術的確立(導入・離脱手順,等)とプロトコルの至適条件設定(至適流量比率,至適治療時間,等)にむけて,ブタ(25-30kg,ランドレース種)を用いた全身麻酔下手術を実施してきた.ECMO回路構成。ECMO導入の手技、手順に関して再確認し、ECMOポンプの流量の調整により、血流がどの程度どこに流れるのかを各条件で計測した。 再還流後のPGDを模擬的に再現するため、左肺クランプモデルでも予備実験を複数回行った。その後Combined-VA-VPA回路を導入し、肺保護戦略として設定した実験条件を達成&維持できるか確認を行った。VA回路およびVPA回路への血流や肺動脈圧の条件、肺保護換気等、概ね条件が達成できることを確認した。実験内容と治療効果を考慮し、ECMOの治療時間を4時間とすることも決定した。しかし2回のクランプモデルでは肺へのダメージが強すぎた影響もあり、ECMO離脱後1時間以内にブタが死亡し、ECMO離脱後の観察は出来なかった。 今後は条件を再調整したクランプモデルでの予備実験を行う予定である。新しい条件でブタが死ぬことなくECMO離脱が可能か、またECMO離脱後の肺の酸素かデータ改善が得られるかどうかを確認する。また次の段階として実際に豚の肺移植を行って、治療効果の判定を行いたいと考えている。
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