スキルス胃癌は極めて予後不良な疾患である。豊富な間質成分を有することが特徴であり、スキルス胃癌の癌関連線維芽細胞(Cancerassociatedfibroblast;CAF)が腫瘍微小環境をリモデリングすることが報告されている。本研究では、スキルス胃癌で豊富なCAFのheterogenietyを明らかにし、CAFにおける腫瘍促進に関連する標的分子を明らかにすることを目的とした。そして、腫瘍特異的DDS(drugdeliverysystem)を利用したスキルス胃癌CAFに特異的な新規治療の開発を目標とした。スキルス胃癌を含む非充実性低分化型胃腺癌(por2)に着目したシングルセル遺伝子発現解析を行った。その結果、por2胃癌CAFにも過去に報告されている筋繊維性CAFや炎症性CAFの集団が存在することを確認した。また、por2胃癌では筋繊維性CAFに特徴的な遺伝子発現が高い1つのクラスターの割合がpor2以外の胃癌と比較して多く、細胞増殖に関わる経路が有意に上がっていた。por2胃癌のCAFにはheterogeneityがあり,筋繊維性CAFが腫瘍内へのCD8陽性T細胞浸潤を抑制している可能性が示唆された.さらにGSEA解析ではpor2胃癌で神経伝達受容体活性が有意に高く、coreenrichmentgeneの中で治療標的になる可能性がある分子を特定することができた。現在までにスキルス胃癌症例のシングルセル遺伝子発現解析データを集積できており、さらなる詳細な解析を行う予定である。また、今後は同定した分子の機能的意義を評価し、治療候補分子標的ナノテクノロジーを応用した有害事象が少ない、かつCAF特異的治療の開発を目指す。
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