研究実績の概要 |
【背景・目的】肝細胞シート(Hepatocyte Sheet;HS)移植は肝臓移植に代わる有効な治療技術として期待されている。当科では独自のHS形成技術を開発し報告してきたが、胆汁鬱滞による肝障害が問題とされており、我々は改善のために化学的誘導された肝前駆細胞(Chemically induced liver progenitor; CLiP)に着目し胆汁排泄システムを開発した。今回このシステムを足場とした肝/胆道複合化シート(Hepato-Biliary sheet: HBS)を作成し評価した。 【HBSの作成】マウス胚性線維芽細胞上にCLiPを播種し、胆管誘導培地で14日間培養した。胆道構造が誘導された後、成熟肝細胞を播種し3日間培養し作成した。HBSの構造及び機能を生体内外で評価した。 【結果】HBSは免疫染色で胆管構造と成熟肝細胞が隣接する構造を示し、胆汁排泄アッセイにおいても十分な機能を示した。また、HSに比べCYP3A4活性ならびにアルブミン産生能は有意に高値を示した。遺伝子発現は、肝特異酵素およびトランスポーターの発現が有意に高値であった。次に免疫不全マウスへ移植すると、生体内に生着し、胆管様構造を維持し、シート内にマウス血管細胞の浸潤を確認した。免疫不全肝不全モデルマウスへの移植では、血中内ラットアルブミン濃度は、HBS群はHS群と比較し術後7日(9.5±0.8 vs 5.8±0.6×10^5 ng/mL, p<0.05)、28日(11±9.0 vs 3.2±3.2×10^5 ng/mL, p<0.05)と有意に高値であった。 【結論】HBSは胆管構造有することで高い肝機能ならびに胆管機能を示し、HBS移植は肝臓移植に代わる有効な治療技術として期待できる。
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