研究実績の概要 |
髄芽腫におけるSLFN11発現量と予後との相関をみるため、過去の大規模臨床研究におけるRNA-seqデータ, 長期予後データを解析した. RNA-seqデータからSLFN11の発現量を抽出し, 予後との相関をKaplan-Meier法を用いて検証した。手術症例612例のデータ解析ではSLFN11高発現の症例で, 5年生存率95%と非常に良好な予後を示す一方, SLFN11低発現の症例では70%に留まった. さらにRNA-seqデータから21000遺伝子のうち最も生命予後と相関する遺伝子のランク付けを行ったところ、SLFN11は151位に位置することが判明した。 また髄芽腫細胞株にコンストラクトを導入しSLFN11を強制発現させ, シスプラチンなど複数のDNA傷害薬への感受性の変化を評価した. SLFN11発現に伴いDNA傷害薬投与時のDNAダメージマーカーの上昇、アポトーシスの促進を認めた。この髄芽腫細胞株の同所性異種移植を行ったマウスモデルにおいて, SLFN11発現がDNA傷害薬への反応を改善し, 予後を延長, 腫瘍増大を抑制することが示された. さらにSLFN11低発現の髄芽腫細胞株D425に対し、HDAC inhibitorであるRG2833を使用し、in vitroにおいてSLFN11のアップレギュレーションが見られること、DNA傷害薬Cisplatin及びSN38と治療シナジー効果が見られることが示された。しかしながらこのアップレギュレーションの効果はコンストラクトを用いた場合と比べると弱く、in vivoにおける生存期間増加には寄与しなかった。
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