髄芽腫の公開データベースを解析し、2万以上の遺伝子よりSLFN11は予後との相関がとても強い(上位1%)ことを発見した。続いて、高発現、中発現、低発現の3群に分けたところ、今まで報告されている髄芽腫の予後因子34因子の中で、SLFN11で最も良く予後の3群が分かれることを明らかにした。次に髄芽腫の分子分類の4群でSLFN11のmRNA発現を比較すると、最も予後良好であるWNT群の多くの症例で SLFN11は高発現し、2番目に予後良好であるSHH 群の一部の症例が SLFN11高発現、予後不良であるGroup 3、Group 4では SLFN11が低発現であることが判明した。さらに WNT群25 例、SHH群27例を含む合計98例の髄芽腫で SLFN11蛋白発現を免疫染色で評価したところ、mRNA発現と同様にWNT群およびSHH群の一部の症例で強く染色されたが、Group 3およびGroup 4の症例は殆どが SLFN11陰性だった。次に髄芽腫細胞株を用いてSLFN11発現およびシスプラチンに対する感受性を検証したところ、SLFN11を発現する髄芽腫細胞株(SLFN11(+)株)で SLFN11をノックアウトすると、シスプラチンに対する感受性が低下した。反対に、SLFN11を発現しない髄芽腫細胞株( SLFN11 (-)株 )でSLFN11を過剰発現させるとシスプラチンに対する感受性は上昇した。また、マウス頭蓋内移植モデルにおいても、SLFN11過剰発現細胞株では SLFN11(-)株と比べてシスプラチンへの感受性が高いことを示した。本研究の結果から、個々の髄芽腫症例においてSLFN11の発現を免疫染色で評価することで、化学療法に対する感受性を術後早期に予測可能なことが示唆された。
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