網膜色素変性症と中枢神経障害を併発する一群において、脂質代謝酵素ホスホリパーゼA2分子群のひとつであるPNPLA6(Patatin-like phospholipase domain containing 6)の遺伝子変異が報告されている。本研究は、細胞内で機能するPNPLA6に着目し、網膜におけるPNPLA6の機能と疾患発症メカニズムの解析を行った。 これまでに、PNPLA6は網膜色素上皮細胞においてホスホリパーゼB作用により生体膜リン脂質よりコリンを産生すること、およびタモキシフェン点眼・全身投与によるPNPLA6欠損マウスは網膜変性をきたすことを明らかにしてきた。本年度はさらに、網膜色素上皮特異的なPNPLA6ノックアウトマウスの表現型を解析した。摘出眼球における網膜のHE染色および電子顕微鏡像より組織学的な解析を行ったところ、網膜全体の菲薄化が認められ、特に網膜色素上皮細胞層は菲薄化していた。網膜電図を用いた電気生理学的解析では、光への応答が大きく低下していた。これらの表現型は、薬剤誘導性PNPLA6欠損マウスと同様のものであった。 2023年度は、本研究成果を(1)日本眼科学会総会(東京)にてシンポジウムで発表、および、(2)International conference on the bioscience of lipids(スペイン)において発表し、(2)にてBest poster awardを獲得した。
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