一昨年度までの研究において、インドメタシンミセルと類似した構造をとるPEGylated-Gold Nanoparticles (GNPs)用いてヒト胎盤通過性の違いを検証し、10nm、20nm、30nmのGNPsそれぞれについて検証を行った。予備実験において、30nmのGNPsがヒト胎盤灌流モデルにおいて胎盤通過性が著明に低下することを示していたが、実験を複数回行うことにより、10nmGNPs、20nmGNPs、30nmGNPsそれぞれの胎盤通過性についてのデータ集積に成功した。その結果、予備実験の結果を指示する形で、GNPsはサイズ依存性に胎盤通過性が低下し、30nmGNPsがほとんど胎盤を通過しないことを有意差をもって示すことが出来、PEGでコーティングされた物質の胎盤通過におけるサイズのカットオフが30nmにあることを明らかにすることに成功した。 昨年度はこれを基にGNPsと類似した構造を有する、40nmのインドメタシンを搭載した高分子ナノミセルの安定した作成に成功した。このインドメタシンミセルを用いてヒト胎盤灌流モデルでの検証を行い、インドメタシンミセルがインドメタシンと比して胎盤通過性を低減することを示すことに成功した。我々は、インドメタシンが有する分子が小さく脂溶性であるという特徴を高分子ナノミセルを用いて変換し、より大きく水溶性の、インドメタシンに比べて胎盤通過性の低いインドメタシンミセルを開発することに成功した。
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