研究実績の概要 |
肥満は変形性膝関節症(KOA)のリスクファクターの一つである。近年我々は肥満KOA患者の滑膜組織では肥満細胞(MC)が増加することを報告してきた。肥満で増加するサブセットの探索とその表現型を解析した。正常体重(NW; BMI (body mass index)<25 kg/m2, n = 79)、過体重(OW; 25 and≦30 kg/m2, n = 87)、肥満(OB;> 30 kg/m2, n = 40)KOA患者のSMにおけるNMU、NMUR1、NMUR2およびMCマーカーCPA3 の発現量を比較した。また、正常群と肥満群で患者背景(年齢)が異なったため、傾向スコアマッチング後の正常群(n=38)と肥満群(n=38) 間で遺伝子発現を比較した。KOA 患者の滑膜組織から磁気ビーズを用いて非肥満分画(CD3+, CD14+, CD19+, あるいはCD90+)、 CD88+MC 分画(CD88+CD3-CD14-CD19-CD90-), CD88-MC 分画(CD88-CD3-CD14-CD19-CD90-)を 採取後、各群のNMU,NMUR1,NMUR2, CPA3 の発現を real time PCR を用いて比較検討した。NMUとNMUR2の発現量は3群間で同等であったが、NMUR1はNWに比べOWとOBで有意に高かった。さらに、CPA3の発現はNWに比べOBで有意に高かった。傾向スコアマッチング後も同様にOB群におけるNMUR1, CPA3の発現はNWに比べ有意に高かった。NMUR1およびCPA3の発現量は、CD88(+)およびCD88(-)のMC-RFの両方で、MC-PFよりも有意に高かった。NMU欠損マウスではマクロファージにおけるIL-6産生が低下するなど、NMU/NMURs 経路は炎症プロセスに関与することが報告されている。従って、滑膜組織におけるNMUR1発現MCの増加は、肥満KOA患者の滑膜における炎症に寄与する可能性が示唆された。
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