研究実績の概要 |
肥満は変形性膝関節症(KOA)のリスクファクターの一つである。しかし、その病態は十分に明らかになっていない。昨年度までに肥満患者の滑膜組織ではCD88陰性NMUR1陽性の肥満細胞が増加している可能性を示した。しかし、肥満KOA患者と正常体重KOA患者に存在するCD88陰性NMUR1陽性細胞の表現型の差異については明らかになっていなかった。そこで本年度は正常体重および肥満OA患者におけるCD88陰性NMUR1陽性細胞の特性を検討した。KOA 患者の滑膜組織から磁気ビーズを用いて非肥満分画(CD3+, CD14+, CD19+, あるいはCD90+) およびMC 分画(CD3-CD14-CD19-CD90-)を 採取後、肥満細胞分画をさらにCD88+とCD88-に分画し、CD88陰性NMUR1陽性肥満細胞を得た。カラムを用いてRNAを抽出後、RNA-seq解析を行った。その結果、肥満KOA患者から採取したCD88陰性NMUR1陽性肥満細胞は正常KOA患者から採取した肥満細胞に比べ、RAMP3の発現が高く、AREG, HLADRB5の発現は有意に低かった。近年、RAMP3のリガンドであるアドレノメデュリンは肥満細胞の活性化に関与することが報告されている。CD88陰性NMUR1陽性肥満細胞におけるRAMP3の発現は肥満KOA患者の病態に関与している可能性がる。肥満KOA患者の滑膜組織における肥満細胞の活性化にはニューロジンU,アドレノメデュリンなどの神経ペプチドが関与している可能性が示唆された。
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