研究課題
a妊婦のウイルス感染は、胎内感染による児の障害や妊娠合併症を引き起こす。胎盤構成細胞のうち合胞体栄養膜細胞は母体血と接する胎児由来の細胞で、ガス交換、ホルモン産生などの胎盤の主要な機能を果たすほか、母体に感染した病原体の胎児への移行を妨げる免疫学的関門として働く。しかし、その防御メカニズムの全貌はまだ明らかになっていない。本研究では、ウイルスが胎内感染するメカニズムと胎盤に障害を与えるメカニズムを検討する。さらに、妊娠マウスモデルを用いて合成二本鎖RNAが胎盤や出生仔に与える影響を評価する。1. ヒト胎盤由来初代分化栄養膜細胞の抗ウイルス作用の検討:合成二本鎖RNAに対する合胞体栄養膜細胞の免疫反応を元に、実際のウイルスを用いて検討を行った。具体的には、異なるタイプのウイルスに対する反応を確認するため、セロタイプの異なるアデノ随伴ウイルスを合胞体栄養膜細胞モデルに感染させた。まず、Type III interferonであるIL28Aの遺伝子発現及びタンパク発現を確認したが、セロタイプに関係なく、すべてにおいて発現を認めなかった。一方、細胞生存に関しては、セロタイプによって障害を受けるものと、受けないものがあり、ウイルスごとに異なる反応が確認された。2. 妊娠マウスの合成二本鎖RNA投与による妊娠合併症モデルの検討:合成二本鎖RNAを投与した野生型とTlr3 deficientマウスを、炎症の急性期(16.5 days post coitum, dpc)、慢性期(18.5 dpc)で評価し、その胎盤のTranscriptome解析を実施した。その結果、急性期と慢性期、またマウスの遺伝子型で、発現する遺伝子群が変化していた。特に、胎仔体重・胎盤重量減少を示す慢性期の野生型マウスの胎盤では、電解質輸送や糖異化など、胎盤機能に関わる経路に関わる遺伝子の発現変化が認められた。
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