研究実績の概要 |
本年度は、口腔と認知機能とのデータの入手が遅れたため、口腔状態との関連が示唆されるメタボロームに着目し、東北メディカル・メガバンク機構が2013年~2016年に実施した宮城県在住の60歳以上の地域在住高齢者を対象としたデータを用い、メタボロームと認知機能低下について、検討を行った。説明変数は43種類のメタボロームとし、目的変数は認知機能低下の有無とした。メタボロームに対し主成分(PC)分析で次元削減を行った後、ロジスティック回帰分析を行い、認知機能低下のオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。2,940人が解析に含まれ(男性:49.0%、平均年齢:67.6歳)、1.9%に認知機能低下がみられた。多変量解析の結果、必須アミノ酸が多いPC1は、認知機能が良好な方向に関連し(OR=0.89;95%CI,0.80-0.98)、ケトン体が多いPC2は、認知機能低下と関連していた(OR=1.29;95%CI,1.11-1.51)。本研究については論文投稿を行い、査読中である。口腔と認知機能との関連についての東北メディカルメガバンク機構のデータを用いた研究に関しては、文献レビューを実施したが、解析に関してはデータ申請の遅れが生じ検討ができなかった。現在データ申請を進めているため、データ入手後に検討を行う。 研究全体としては、実施した二つの研究から、口腔と認知機能との関係について、またメタボロームと認知機能との関連について多面的に明らかにすることができた。今後も、口腔と認知機能との関連について、メタボロームなどを含めた解析を行っていくことで、より詳細なメカニズムの解明を行う。
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