1)プロポフォール・ケタミンが惹起するシグナル伝達機構の網羅的解析:プロポフォールおよびケタミンはPKCをはじめ、様々なリン酸化酵素を活性化し、様々なタンパク質のリン酸化と遺伝子発現を誘導すると考えられる。そこで、以下の実験を行った。 プロポフォールおよびケタミンを処理した細胞をリン酸化プロテオミクスに供し、プロポフォールが誘導するリン酸化タンパク質を網羅的に検索した。それらのタンパク質として血管痛の原因候補としてNO合成酵素、TRPチャンネル、麻酔薬効果発揮の候補としてTREK-1などのイオンチャンネル、また抗うつ薬発揮作用に関して、SERTなどを想定していたが、想定していた結果には至らなかった。しかし、プロポフォールによりPKC転座が誘発され、PKCが活性化されることおよびそのメカニズムは明らかとなった。 2)プロポフォール・ケタミンによるSERTの機能調節機構の解析:一般的に、細胞膜に発現するSERT機能のダウンレギュレーションが、シナプス間隙でのセロトニン増加を促し、抗うつ薬作用の発揮に繋がると考えられている。そのため、プロポフォールおよびケタミンがSERTに及ぼす影響を解明するために以下の実験を行った。 遺伝子導入によりSERTを一過性・安定発現させたCOS-7細胞・HEK293細胞を用いて、セロトニン取り込み活性に対する、プロポフォールおよびケタミンの影響を検討したが、実験に適切な薬剤の濃度が定まらず、結果を出すに至らなかった。
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