研究課題/領域番号 |
22K20995
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 啓喬 九州大学, 大学病院, 助教 (90961996)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 炭酸アパタイト / 多孔体 / 骨補填材 |
研究実績の概要 |
炭酸アパタイトは骨無機質の主成分であり、高い骨伝導性、骨置換性を有することから人工骨補填材として口腔インプラント治療時の骨再建に使用されている。 骨補填材の骨造成能力は組成だけでなく構造にも影響を受ける。中でも全ての気孔が互いに連通した三次元連通気孔は細胞や組織液を迅速に材料内部に誘導することができるため、骨造成を促進すると考えられる。本研究では炭酸アパタイトに三次元連通気孔を付与し、そのサイズや量を制御することで、三次元連通気孔が炭酸アパタイトの骨造成に与える影響について検証を行う。 まずは異なる気孔サイズを有する炭酸アパタイトの作製を行うこととした。先行研究では顆粒状の炭酸アパタイトを粟おこしの様に連結することで、三次元連通気孔を有する炭酸アパタイトを作製できることを明らかにしている。我々は顆粒のサイズを変えることで粟おこし様の炭酸アパタイトの三次元連通気孔のサイズを制御できると考えた。 水酸化カルシウムを炭酸化して調製した炭酸カルシウムブロックを粉砕・篩分けし、サイズの異なる炭酸カルシウム顆粒を調製、電気炉で熱処理してサイズの異なる酸化カルシウム顆粒を調製した。酸化カルシウム顆粒を型枠に入れ、水と反応させ、水和膨張させることによって三次元連通気孔を有する水酸化カルシウムを調製し、これを二酸化炭素に曝露して、組成を炭酸カルシウムに変換させた。 得られた炭酸カルシウムを走査型電子顕微鏡で観察したところ、炭酸カルシウム表面に多数の気孔を確認することができた。また、その気孔サイズは使用した酸化カルシウムの顆粒サイズにより異なっていることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
酸化カルシウムの水和膨張を利用した三次元連通気孔を有する炭酸アパタイトの作製方法は先行研究において確立していたが、酸化カルシウムの顆粒サイズを変えた結果、先行研究と同様の方法では顆粒同士が連結しなかった。そのため、顆粒が連結する化学反応の条件を再度最適化する必要があり、予定よりも進行が遅れている。 水和膨張の温度や時間を変化させることで、全ての顆粒サイズで顆粒が連結し三次元連通気孔を有する炭酸カルシウム多孔体を作製することができた。 現在炭酸カルシウムを炭酸アパタイトへと組成変換しているが、炭酸カルシウム作製の条件を最適化した結果、密度や表面積が変化したと考えられるため、このステップにおいても化学反応の条件の最適化を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、すべての気孔サイズの炭酸カルシウムを炭酸アパタイトを組成変換する化学反応の条件を確立する。具体的には反応時間、温度、使用する溶液の濃度などの最適化を行う。その後、炭酸アパタイトの形態学的評価、物性評価を行い、気孔サイズが炭酸アパタイトにどのような影響を与えるかを検証する。炭酸アパタイトへの組成変換がうまく進まない、もしくは得られた炭酸アパタイトの構造や強度に問題がある場合は顆粒の作製方法も再度検討する必要がある。 最終的には実験動物を用いて、炭酸アパタイトの気孔サイズが骨形成に与える影響について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は試料の作製および条件の最適化に時間がかかってしまい、細胞実験や動物実験に至らなかったため、そのための試薬や物品、実験動物の購入を行うことができなかった。 来年度は実験動物や器具を購入する予定である。
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