研究実績の概要 |
口腔内スキャナーを用いたデジタル印象法は口腔内を直接スキャンして三次元形態データを取得することにより,補綴装置の寸法精度の低下が解消される.しかし,口腔内スキャナーは,印象範囲が大きくなるにつれて精度が低下することが報告されている.そこで予備的検討において,補助デバイスを開発し,欠損部顎堤に介することで従来法よりも精度が向上することが示された.しかし,臨床応用と製品化に向けて,真度の検討,形態の最適化,スキャンパスの構築,およびin vivo における効果測定など不明点が多い.そこで本研究の目的は補助デバイスの形態の最適化と,最適化された補助デバイスの精度・真度補償効果を検証することであった. 研究結果として模型上での予備的検討でスキャン補助デバイスの最適な形態,及びスキャンパスを決定し,昭和大学における人を対象とする倫理審査委員会にて認可を受けた. その後被験者を 5 名選定し,歯科医師としての経験年数10 年以上の3 名が上顎無歯顎に対しインプラントを4本埋入している患者を対象として通常通りの全顎デジタル印象を取得し,その後,本研究により制作されたスキャン補助デバイスを使用して全顎のデジタル印象を取得した.先述の方法で比較検討したところスキャン補助デバイスを使用した場合,統計学的に有意に精度が向上した. また真度についても同様に現在臨床上で広く一般的に用いられている方法のベリフィケーションインデックスから起こした基準模型を非接触式スキャナーでスキャンしたデータを基準にスキャン補助デバイスの有無を比較したところ統計学的に有意に真度が向上した. これらの結果によりインプラントにおけるフルアーチ症例をデジタル印象を用いて対応することが可能となる可能性が示唆された.
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