【目的】 昨今歯周病は死亡原因第2位の虚血性心疾患の発症に関与していることが数多く報告され、歯周病罹患患者は交感神経系の活性化の指標となる、24時間心拍変動解析(HRV)の異常を認める割合が高いことも報告された。併せて研究代表者は、歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis由来の内毒素(PG-LPS)を持続投与する方法で作成した歯周病マウスモデルの解析より、PG-LPSの持続投与は心機能低下、心臓リモデリング(線維化、アポトーシス)促進し、交感神経系の下流に存在するβアドレナリン受容体(β-AR) の下流の分子(カルモデュリンキナーゼII)のリン酸化作用があることを報告した。これらの研究背景から「歯周病による心疾患発症メカニズムには交感神経系を介したβ-ARシグナルの持続的な活性化が重要である」という仮説をたてその検証を行った。 【材料・方法】 交感神経系の活性化をテレメトリー心電図を用いて、心拍変動解析(HRV)を実施した。雄12週令マウス(C57BL/6J)にテレメトリー心電図計を埋入し、2週間リカバリー後Control群(PBS)、PG-LPS(0.8 mg/kg/day)を7日間腹腔内投与後、24時間測定を実施した。終了後血清採取し、交感神経系の活性レベルを示す血清アンギオテンシン2(Ang2)をELISAにて測定した。 【結果・考察】 テレメトリー心電図による心拍変動解析(HR:心拍数、LF/HF ratio:交感神経系成分)と血清Ang2レベルは、Control群に比較してPG-LPS投与群で有意に高値を示した。PG-LPSの慢性投与は、交感神経系の持続的な活性化による心疾患発症に関与している可能性が示唆された。
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