前年度で、破骨前駆細胞様細胞であるRAW264.7細胞は継代数の増加に伴い、cGAS-STING経路が活性化されていることを確認した。本年度は、引き続き5、10、20代に継代したRAW264.7細胞を用いて、STING阻害剤であるC-176を添加することでSASPが抑制できるか、また破骨細胞への分化能に変化があるか比較検討を行った。 まず、各継代数の細胞において、C-176添加群、未添加群に分け比較検討を行った。まず、ウエスタンブロット法にてC-176添加群において、STINGの発現が低下していることを確認した。培養上清中のSASP因子(IL-6、TNF-α、NO)の濃度をELISAにて定量的に評価した。C-176未添加群は、継代数の増加に伴い、SASP因子の濃度はいずれも有意な上昇を認めた。一方、C-176添加群においては、未添加群と比較しSASP因子の濃度はいずれも有意に低下していた。各継代群にRANKLを投与し、TRAP染色およびTRAP Assayにて破骨細胞への分化能を定量的に評価した。C-176未添加群において、20代継代した細胞群では破骨細胞への分化能が有意に低下していた。一方、C-176 添加群では、20代継代した細胞群でもTRAP活性は高値を示し、未添加群と比較しTRAP活性は有意に上昇していた。また、TRAP染色においても、C-176未添加群ではほぼ確認できなかった破骨細胞が、C-176添加群においては確認できた。 RAW264.7細胞は老化に伴い、破骨細胞分化能が低下し、cGAS-STING経路が活性化されSASPが誘導される。RAW264.7細胞において、STINGを阻害することでSASPの誘導を抑制でき、破骨細胞の分化能が回復することが確認できた。STING経路もしくはSASP因子自体に、破骨細胞分化能を制御する因子との関連があることが示唆された。
|