研究課題/領域番号 |
22K21025
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
伊藤 慎一郎 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (50962114)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 幹細胞能 |
研究実績の概要 |
抜歯窩は常に膜内骨化で修復されるが、大腿骨円形骨欠損部は膜内骨化と軟骨内骨化が混在した治癒過程をたどると言われている。これまでに、骨再生過程における軟骨の出現に関しては、骨欠損部の骨安定性や血液供給、幹細胞の分化能などが注目されてきた。しかし、大腿骨円形骨欠損では骨周囲の環境、血液供給が十分にあっても軟骨が形成された点を踏まえると、骨化様式の差異は骨再生過程に出現する幹細胞の分化能に依存している可能性が大きいと考えた。そこで、本研究では骨格部位依存的に修復組織内幹細胞の分化能に多様性があるかを明らかにすることを目的とした。 8週齢の雄CAG-EGFP-Tg(GFP)マウスまたはRosa26-tdTomato(Tomato)マウスの左側上顎第一臼歯の抜歯と左側大腿骨骨幹部の円形骨欠損を作製した。損傷後3日目の抜歯窩と大腿骨骨欠損部から再生組織を採取し各々を野生型マウスの抜歯窩及び大腿骨骨欠損部に異所性に移植した。GFPマウス抜歯窩再生組織の大腿骨骨欠損部への異所性移植1週後では、GFP陽性細胞の多くはALP陽性細胞と類似した分布を示したが、GFPとSox9が共発現する細胞は確認できなかった。移植2週後では、再生骨の骨細胞に少数のGFP陽性細胞が確認できた。一方、大腿骨再生組織の抜歯窩への異所性移植は咀嚼等により移植組織が脱離したと考えられた。以上の結果より、抜歯窩再生組織を大腿骨骨欠損部へ異所性移植した場合、骨芽細胞への分化能は維持しているが、軟骨細胞への分化能は獲得していない可能性が考えられた。また、移植材料はGFPマウスよりTomatoマウスを使用した方が、移植後の経過を観察するのに適している可能性が示されたので、今後は、Tomatoマウスを用いてさらに詳細な移植細胞の分化能を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、GFPマウスを用いて移植実験を行う予定であった。しかし、抜歯窩の修復骨内細胞のGFP蛍光発現は弱く、移植後の細胞動態を解明することが困難であることが明らかとなった。そのため、実験に使用するマウスをTomatoマウスへ変更することとした。Tomatoマウス抜歯窩の修復骨内細胞のToamto蛍光発現が十分であることを確認し、実験を再開した。 また、当初の再生組織の移植方法では、細胞単離しゲルに包埋して移植する予定であったが、細胞数が少ない事、移植後の細胞残存率が悪い事が明らかとなり、再生組織自体を移植する方法へ変更した。 したがって、実験に使用するマウスの変更に伴い飼育・繁殖期間の長期化、移植方法の予備実験の長期化に伴い、進捗としてはやや遅れている状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は抜歯窩、大腿骨骨欠損部内の再生組織幹細胞の骨・軟骨分化調節因子の解明を行う。BMP-2は、骨・軟骨誘導を示すことが知られているため、BMP-2誘導実験による抜歯窩および大腿骨骨欠損部の再生組織幹細胞の幹細胞能を比較検討する予定である。 具体的には抜歯窩、大腿骨骨欠損部に直接、BMP-2含有コラーゲンスポンジを埋入しBMP-2誘導による治癒過程を評価する。この実験から、再生組織のBMP-2による異所性骨化誘導の影響を検討することで、再生組織内幹細胞の多様性を解明することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本申請研究における実験の進捗はやや遅れている。使用するマウスの変更、移植方法の変更等の予備実験期間が長くなったため、繰り越し額を含めて次年度に実験を行う予定である。 使用計画は抜歯窩、大腿骨骨欠損部内の再生組織幹細胞の骨・軟骨分化調節因子の解明を行う。BMP-2は、骨・軟骨誘導反応を示すことが知られているため、BMP-2誘導実験により抜歯窩および大腿骨骨欠損部の再生組織の幹細胞能を比較評価する予定である。そのため、抜歯窩、大腿骨骨欠損部に直接、BMP-2含有コラーゲンスポンジを留置しBMP2誘導による治癒過程を評価する予定である。この実験から、再生組織のBMP-2による異所性骨化誘導の影響を検討することで、再生組織内幹細胞の多様性を解明することを目指す。
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