研究課題
糖尿病は、歯周病の悪化や歯周治療後の創傷治癒遅延をもたらすだけでなく、歯科用インプラントのオッセオインテグレーションにも影響を及ぼすことが示唆されている。しかし、糖尿病患者におけるオッセオインテグレーションを促進する手法は開発されておらず、糖尿病患者におけるインプラント治療の明確なコンセンサスは得られていない。本研究では、2型糖尿病モデルラット骨髄由来間葉系幹細胞(BMMSCs)を使用した細胞実験および同モデルラット口腔内へのインプラント埋入実験を通して、糖尿病状態において抗酸化剤がオッセオインテグレーションを促進する可能性を検討し、またその分子メカニズムを解明する。本研究により、糖尿病患者におけるインプラント治療の治療成績の向上への寄与を目指す。抗酸化剤が細胞増殖、石灰化に与える影響の分子学的メカニズムを明らかにする目的でIn vitro実験を進行中である。2型糖尿病モデルラットからのBMMSCs単離を終了し、細胞増殖能と石灰化能について評価を行った。また、実際に2型糖尿病モデルラット第一臼歯抜歯窩にインプラント埋入を行い、抗酸化剤投与がオッセオインテグレーションに与える影響について明らかにする目的で、In vivo実験を計画していたがインプラント体の表面処理方法について検討が必要な状態である。一方で2型糖尿病モデルラットに対して実験的歯周炎を誘発し、その歯肉を解析した。この結果2型糖尿病モデルラットにおいて、RNAシークエンスにてPPARシグナリングパスウェイ関連遺伝子の低下を認め、rt-PCRおよび免疫染色についてPPARαおよびPPARγの発現低下を認めた。この結果から、糖尿病における歯肉組織の治癒遅延にはPPARサブタイプの発現低下が関連していることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
In vitro実験においては、高血糖症発症後の8週齢オスZDFラット及び対照として8週齢オスZLラット大腿骨よりBMMSCsを採取し、BMMSCsを増殖培地と骨芽細胞誘導培地にて培養し、細胞増殖能評価(MTS assay)、細胞分化能評価(ALP assay)、rt-PCRにてALP発現の確認等を行った。In vivo実験についてはインプラント体の表面処理に関して再度検討が必要な状態であり、実験計画の変更が必要な可能性がある。
In vivo実験についてインプラント体準備が困難な場合は実験計画の変更を検討、遂行していく。
国際学会への参加を見送ったため次年度使用額が生じた。本年度アメリカ歯周病学会への参加を予定している。
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Journal of Periodontal Research
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10.1111/jre.13249