本研究の目的は、リゾリン脂質のひとつであるLPAがグルタミン酸を介して三叉神経領域の神経障害性疼痛における細胞間のシグナル伝達に関わるかを解明することである。微小透析法は、組織に埋め込んだ細い透析チューブに生理的な液体を流すことで毛細血管の機能を模倣することで、組織から物質を回収することができる。覚醒下ラットを用いた三叉神経節からの微小透析法での細胞外液のサンプリングは、申請者らが以前の研究で確立した方法であり、継続して用いることで今後の微小透析法を用いた方法の発展に寄与できる。また本研究で焦点をあてているリゾリン脂質は、三叉神経領域において十分な探索がなされていないため、リゾリン脂質の更なる研究発展につながり、三叉神経領域における慢性疼痛の新たな予防・治療のターゲットになることが期待し研究を行ってきた。 これまでの初年度に実施したリゾホスファチジル酸(LPA)を用いた実験系の確立やリゾリン脂質受容体(LPA受容体)発現細胞の探索実験結果を踏まえて、研究計画に則り実験を進めた。 1)リゾリン脂質受容体(LPA受容体)アンタゴニストを用いた行動実験ではLPA受容体アンタゴニストをカニューレから直接三叉神経節へ投与し、IONI(Infraorbital nerve injury)処置により生じた機械的刺激による逃避行動の閾値の変化について評価を行った。 2)LPA受容体アンタゴニストを用いた微小透析法によるグルタミン酸量定量解析においてはLPA受容体アンタゴニストをカニューレから直接三叉神経節へ投与し、その後三叉神経節内に微小透析プローブを挿入し灌流液を回収した。回収した灌流液をHPLC(High Performance Liquid Chromatography)を用いてグルタミン酸量を解析した。 その結果三叉神経領域における神経障害性疼痛にLPAの関与が示唆された。
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