研究課題
慢性炎症疾患である歯周炎の発症・進行と創傷治癒には、歯周組織に浸潤したマクロファージの機能が深く関わっている。マクロファージはその働きにより、炎症型(M1)および炎症の収束と組織再生を担う修復型(M2)の2種類に大別される。歯周組織破壊には主に炎症性(M1)マクロファージが関与する一方で、歯周組織再生の成功には、修復型(M2)マクロファージの誘導が不可欠であるとされる.申請者のグループは先行研究で、歯肉幹細胞(GMSC)由来エクソソームによる修復型(M2)マクロファージ誘導を介した歯周炎抑制効果を報告した。一方、M2マクロファージはアデノシン三リン酸(ATP)から細胞膜酵素CD39/CD73の働きで産生されるアデノシンにより誘導される。近年、幹細胞を炎症刺激することによるネガティブフィードバック機構により、その抗炎症能が増強することが報告されている。そこで申請者が検証を行った結果、TNF-α/IFN-αによる共刺激が最もエクソソームでのCD73発現を誘導することを確認し、TNF-α/IFN-α共刺激GMSC由来エクソソームは含有CD73/CD5Lの促進を介して相乗的にM2マクロファージ誘導能を増強することを発見した。さらに、転写因子であるSP-1がCD39/CD73両分子の発現制御を行うことに着目し、GMSCへのSP-1活性化によるエクソソーム含有CD39/CD73発現亢進を介して、更に効率的なM2マクロファージ誘導増強効果を得ることを目的として研究を進めている。
3: やや遅れている
GMSCへのTNF-α/IFN-α共刺激GMSC由来エクソソームが、含有CD73/CD5Lの促進を介して相乗的にM2マクロファージ誘導能を増強することを論文発表したが、リバイス実験対応に時間を費やしたため。
SP-1による GMSC 由来エクソソームのCD39/CD73発現制御を介したM2マクロファージ誘導について以下の方法で検証する。①SP-1によるGMSCエクソソーム内包CD39/CD73発現制御機構の解析予備実験の結果から、TNF-α/IFN-α刺激でSP-1/SMAD5発現が亢進することによりGMSC由来エクソソーム内包CD73の発現促進を確認している。CD39に対してSP-1が促進因子であり、SMADが抑制因子であることから、SP-1発現Plasmid導入によるCD39/CD73発現が誘導されるかを検証する。上手くいかない場合、GMSCへのSMAD5-siRNAもしくはCD39/CD73発Plasmid導入によるエクソソーム内包CD39/CD73発現促進を試みる。②SP-1過剰発現GMSC由来エクソソームによるM2マクロファージ誘導能とアデノシン代謝の評価SP-1過剰発現GMSC由来エクソソーム刺激によるM2型マクロファージ誘導能について、qRT-PCRおよびフローサイトメトリーでM1マーカー(CD86)/M2マーカー(CD206)の発現を比較する。細胞はTHP-1もしくはCD14+末梢血単球からの分化マクロファアージを使用する。さらにエクソソーム添加時の細胞内および培養液内のATP量、アデノシン量を測定し、アデノシン代謝が活性化されていることを確認する。
先行研究で使用した試薬の余剰分がそのまま流用可能なものがあり、その分の物品費が節約できたため。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)
Scientific Reports
巻: 12 ページ: 13344
10.1038/s41598-022-17692-0
Frontiers in Cell and Developmental Biology
巻: 10 ページ: 1061216
10.3389/fcell.2022.1061216