研究課題/領域番号 |
22K21042
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
甲斐 一希 九州大学, 大学病院, 医員 (30963110)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 腫瘍随伴マクロファージ / TAM / がん微小環境 / 口腔扁平上皮癌 / scRNA-seq |
研究実績の概要 |
近年、がん周囲組織に特異的なマクロファージが存在することが報告されており、それを腫瘍随伴マクロファージ(TAM)と言われている。われわれは口腔扁平上皮癌(OSCC) において、TAMがIL-10やPD-L1を産生することにより、T細胞の働きを抑制することや、EGFを介して OSCCの増殖にも関与していることを明らかにした。つまり、がんの治療予後を良好なものにするためには、TAMを制御することが重要である。そのためには、未だ明らかにされていないTAMの分化機構や特異的マーカーを同定することが必要不可欠である。そこで本研究では、OSCC組織を用いて scRNA-seq解析を行い、OSCCにおけるにおけるTAMサブセットを同定することを目的とする。さらに、各サブセットを抽出して、in vitroにて機能解析を行うことにより、TAMを標的とした新たな治療法の開発を最終目標とする。 がん微小環境における免疫細胞の解析を行う上で、採取する組織は間質細胞が豊富なほうが免疫細胞の採取がしやすいものと考えられ、口腔内においては舌組織が適当であると考えられた。また本研究での対象細胞はマクロファージであるが、組織中のマクロファージは数はそこまで多くなく、マクロファージのみを抽出して解析を行うと、作業工程でのエラーが生じる可能性が高くなるため、今回は免疫細胞全体を対象に解析を行うこととした。 ヒト舌OSCC組織の一部組織を採取し、細胞を単離した。その後マグネットビーズを用いてCD45陽性免疫細胞のみを抽出し、scRNA-seq解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解析を行うため細胞には、生細胞が必要であり、今回解析を行うことに適した組織採取に時間がかかった。また解析について、通常データ納品まで2か月以上かかるため、納品されたデータ分析までを年度内に行うことは困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
解析を行ったデータは免疫細胞全体について解析を行っているため、マクロファージをデータから抽出し解析を進め、TAM特異的な分子を探索する。その後TAM特異的な分子を発現した血液中の単球とOSCC細胞株やT細胞を共培養し、TAMの機能として知られている腫瘍の増殖促進や抗腫瘍免疫抑制作用を持つかを検討する。最終的にはマウスにがん細胞を局所投与し、がん微小環境を作成し、がん周囲のTAMをターゲットに、同定した分子に対する阻害薬を投与し、阻害薬非投与群と比較し、PD-L1などのTAM標的分子の発現やがん組織の病態形成、転移について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプル提出に時間がかかり、またデータ解析を年度内に行うことができなかったため、予定していた細胞実験、その予算をを翌年度に繰り越した。データ解析を元に細胞実験を行うための物品購入費に充てる予定である。
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