歯科インプラントを含むあらゆる欠損補綴治療において、歯槽骨の吸収は治療を妨げる大きな障壁であり、その改善には骨増生が必要となる。研究代表者は骨の無機成分と同じ炭酸アパタイトを主成分とした新しい骨補填材に着目して研究を行ってきた。炭酸アパタイトは生体非吸収性骨補填材と比較し、目的の骨幅まで骨形成可能なスペース確保後、自家骨と同様の骨置換過程を辿ることが示されている。
本研究は骨補填材が生体内でどのように吸収されているのかを経時的かつ多面的に解析し、自家骨やその他の骨補填材と比較するため、GBRを併用したインプラント埋入モデルの作成とインプラント周囲硬組織の各種解析を行う。
最終年度はこれまでに作成した6週齢雌性Wistar系ラットを用いたインプラント埋入モデルのマイクロCTの解析と各種染色を行った。マイクロCTでは骨補填材填入後2週間で骨補填材顆粒の境界不明瞭となり、既存骨と骨補填材の境界より新生骨への置換が開始されていた。組織形態学的評価では、β-TCPの破骨細胞数がその他の骨補填材より有意に増加しており、骨芽細胞数では有意差はなかった。また血管新生数では同様にβ-TCPが有意に血管数が多く、炭酸アパタイトは有意に少ないという結果が得られた。これらの結果より、GBRを併用したインプラント埋入では2週間という早期経過でβ-TCPが最も反応性に優れ、新生骨は既存骨・骨補填材間より置換開始することが分かった。
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