研究課題
生後2-7日齢のラットにイソフルラン麻酔を行い、口腔底を切開し舌神経を剖出した。その後、ニューロン標識物質が注入されたガラス管を用いて、舌神経にニューロン標識物質を注入する。標識物質が脳に到達する期間を持った後に、脳幹スライス標本を作製し、舌神経を介して標識された上唾液核ニューロンからパッチクランプ記録を行った。予備実験で行った、Phox2b陽性ニューロンが豊富に存在する上唾液核周辺を、グルタミン酸のレーザー光解離を使った微小刺激法を用いるとやはり上唾液核ニューロンに応答がみられた。当実験を何回か行い、確かに上唾液核周辺を刺激すると、上唾液ニューロンに反応があったことを確認した。さらに、Phox2b陽性ニューロンにVenusと光感受性タンパク質のChRFR(光照射でニューロンを興奮させる)が発現する遺伝子改変ラット(Phox2b-ChRFRラット)を用いて、同様に舌神経にニューロン標識物質を注入後、脳幹スライス標本を作製した。そして、上唾液核ニューロンからパッチクランプ記録を行い、Venusの発現を指標に、上唾液核を興奮させる上唾液核駆動Phox2bニューロンが存在するであろう範囲を、オプトジェネティクス(光遺伝学的手法)と二光子レーザー顕微鏡を利用して、Phox2b陽性ニューロンを一つ一つ刺激し、上唾液核ニューロンに応答が生じるか行ったところ反応があった。以上より、上唾液核駆動Phox2bニューロンの存在が確認できた。今後は、脳幹内の上唾液核駆動Phox2bニューロンの局在範囲を解析する必要があり、さらには上唾液核駆動Phox2bニューロンが見つかれば、そのニューロンからもパッチクランプ記録を行い、相互間で実際に刺激と反応が認められるかを解析する必要がある。
3: やや遅れている
予備実験および、Phox2b陽性ニューロンにVenusと光感受性タンパク質のChRFR(光照射でニューロンを興奮させる)が発現する遺伝子改変ラット(Phox2b-ChRFRラット)を用いた実験により、上唾液核駆動Phox2bニューロンの存在が確認できたが、脳幹内にPhox2bニューロンが多数存在するため、上唾液核駆動Phox2bニューロンの局在性を解析するのが非常に困難である。また、1つのニューロンを特定するのに要する時間が長く、ニューロンの状態を最適に維持することが困難であったため、上唾液核ニューロンにパッチクランプをすることは可能であるが、相互する特定の上唾液核駆動Phox2bニューロンをまだ断定できていない。
①上唾液核駆動Phox2bニューロンの局在性を解析するのが非常に困難である→今まで使用していたレーザーの照射範囲をさらに狭い範囲に絞り、上唾液核駆動Phox2bニューロン局在性をより解析する。②1つのニューロンを特定するのに要する時間が長く、ニューロンの状態を最適に維持することが困難である→パッチクランプの技術の改善を図り、上唾液核ニューロンからパッチクランプ記録を短時間に行えるようにする。また、ニューロンの状態が維持できるように、細胞外液の調整や、レーザー照射の手順など実験方法を改善する。
薬剤や機器を購入する予定であったが、実験形態が難しく新規実験に移行することが困難であった。現段階の実験では、データ処理を行うソフトウェアのみ購入が必要であったが、保持している薬剤や機器で対応できることが多く、新たに購入する必要がなかった。しかし、今年度の研究で新規実験を行える目途がたったため、来年度に機器の購入等を行う。
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Neuroscience Research
巻: 178 ページ: 41-51
10.1016/j.neures.2021.12.009