最終年度は前年度に引き続き、口腔扁平上皮癌 (OSCC) に対する“抗腫瘍ウイルス(OBP-301)”併用放射線治療に関する実験を主にin vivoで行った。実際に放射線治療が不応(放射線治療抵抗性)であった口腔がん患者から直接癌組織を移植したマウスモデル(PDXモデル)を用い、放射線併用療法の実験を行うことで、より実臨床に近い実験データの蓄積を目指した。しかし、治療抵抗性のPDXモデルの腫瘍を発育させることは難しく(腫瘍が一定の大きさまで大きくならない、数が揃わないetc)、実験を成立させること自体にかなり難渋した。最終的に、予備実験等では、治療抵抗性患者のPDXモデルにもOBP-301 が一定の効果を発揮する個体は確認したが、立証するまでのデータを得ることはできなかった。しかし、今後の研究に活かすことのできる経験であり、結果であった。 研究期間全体を通じては、まず、in vitroで口腔がん細胞株における抗腫瘍ウィルスの感染・増殖においてキーとなるタンパク質の発現解析を行い、その発現を確認した。次に、OBP-301単独での抗腫瘍効果、放射線併用療法での相乗効果を口腔がん細胞株及び放射線耐性のある口腔がん細胞株の計4種を用いて示し、その分子メカニズムに関しても解析を行った。 in vivoでは、口腔がん細胞を移植したマウスモデル、及び口腔がん患者由来のマウスモデル(PDXモデル)において抗腫瘍ウィルス併用放射線治療の有効性を示した。 上記内容を論文にまとめ、Molecular Therapy Oncolyticsに投稿し、2022年10月にアクセプト、12月に掲載された。 また、上記研究内容は、今後の治療抵抗性口腔扁平上皮癌に対する新規治療法開発の一助となるものと確信している。
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