本研究は、骨細胞による骨代謝制御に細胞外酸性化が与える影響を分子レベルで明らかにすることで、細胞外酸性化が骨代謝にどのような影響を与えるかを解明することを目的としている。我々は、骨細胞によるスクレロスチンとOPGの発現・分泌が細胞外酸性化で促進されることを発見した。本研究は、我々が発見したこの現象の分子メカニズムを解明することをもとに、生体レベルで酸性化の役割を検証することで、学術的独自性および創造性は極めて高い。酸性環境下での骨代謝回転の制御を理解することは、がんの骨転移をはじめとする病的酸性化を生じる骨疾患に対する治療に有用な情報をもたらすことが期待され、臨床的意義は非常に大きい。 骨細胞の細胞外酸性化受容機構の解明に関して、これまでの研究から骨細胞の細胞外酸性化の受容体として、GPR68/OGR1の可能性が高いと考えられるため、Ocy454細胞を抗GPR68/OGR1抗体でマウスの骨組織を骨細胞マーカー抗体と抗GPR68/OGR1抗体で二重免疫染色GPR68/OGR1を解析することを試みた。さらに、Ocy454細胞へのGPR68/OGR1 shRNAの導入、GPR68/OGR1遺伝子欠損マウスを導入し、骨細胞の単離、GPR68/OGR1に対する既知のアゴニスト・アンタゴニストの利用などの実験系を用いて、酸性化によるスクレロスチン、OPGの発現に与える影響を解析することを試みた。 その結果、Ocy454細胞へのGPR68/OGR1 shRNAの導入において、骨細胞の分化前後で骨細胞マーカーの発現状態に違いがあった。この違いが何によるものなのかをさらに解析する必要がある。また、GPR68/OGR1に対する既知のアゴニスト・アンタゴニストの利用した実験結果として、明らかな発現低下を認めることはなかった。さらなる解析必要と考える。
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