研究実績の概要 |
歯周病は多因子性疾患であることから,病態の理解や根治的な治療法の確立は困難を極めている。 我々は,歯周病の病態解明と新規治療法の開発のため,免疫チェックポイント機構と歯周病の関連について検討を行ってきた。その成果として,免疫チェックポイント分子の一つである細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4 (CTLA-4) が破骨細胞分化を抑制し,歯周炎マウスモデルにおける歯槽骨吸収量を減少させることを明らかにした。しかし,そのメカニズムについては未だ不明な点が多い。 そこで本研究は,CTLA-4の詳細な破骨細胞分化調節メカニズムの検討と,局所応用を行った際の歯周組織破壊への影響の評価を行い,新規歯周治療の開発の足掛かりとすることを目的とした。 2022年度は,CD80/86-/-マウスにおいてCTLA-4が歯槽骨吸収に及ぼす影響を評価するため,まずは野生型を用いて絹糸結紮歯周炎マウスモデルの確立を行った。また、in vitroではPP2A発現抑制下での,CTLA-4の破骨細胞分化への影響を評価した。siRNAを用いてPP2A発現を抑制したRAW 264.7細胞に,RANKLとCTLA-4-Igを添加した。添加後48時間,96時間で,qRT-PCRにて破骨細胞分化マーカー (Macrophage-colony stimulating factor, Carbonic anhydrase II, Cathepsin K, Tartrate-resistant acid phosphatase) 発現を評価した。siRNA 導入は細胞生存率に有意な影響を与えないことを確認した。PP2A siRNA 群では,CTLA-4-Ig 添加によるCathepsin K, Trap の発現抑制は確認されなかった。これより,PP2A 発現の調節は,CTLA-4-Ig による破骨細胞分化抑制メカニズムの一つであることが示唆された。
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