研究課題/領域番号 |
22K21073
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
鶴屋 祐人 日本大学, 松戸歯学部, 専修医 (20962278)
|
研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
キーワード | 歯周病 / 接合上皮 / 炎症性サイトカイン / ODAM |
研究実績の概要 |
接合上皮特異的に発現するタンパク質であるOdontogenic ameloblast-associated protein(ODAM)はこれまでの研究において、上皮性付着への関与が示唆され、炎症性歯肉で発現が増加することが明らかとなっている。本研究の目的は、miRNA発現ベクターを導入した歯肉上皮細胞をTNF-αまたはIL-1βで刺激し、炎症時の細胞環境を再現することで、炎症性歯肉で発現が増加するmiR-200bおよびmiR-223によるODAM遺伝子発現調節機構を解析し、炎症時の接合上皮における動態を解明することである。 ODAMは接合上皮特異的に発現することから、接合上皮と歯面の接着への関与が示唆されており、炎症性刺激に着目し、IL-1βまたはTNF-αによる歯肉上皮細胞でのODAM遺伝子の転写調節メカニズムを報告した。ヒト歯肉上皮細胞において、TNF-αおよびIL-1βはAキナーゼ、チロシンキナーゼ、MEK1/2、PI3キナーゼ、NF-κB系の細胞内シグナル伝達経路を介し、CCAAT/enhancer binding protein β(C/EBPβ)およびYin Yang 1(YY1)転写因子を遺伝子プロモーター配列中の応答配列に結合させ、ODAMの遺伝子発現を増加させることを明らかにした。 ヒトODAM遺伝子もまたmiRNAにより調節を受けると仮定し、炎症歯肉で発現が増加するmiRNAがODAMに直接あるいは間接的に及ぼす影響について解析することとした。炎症歯肉で発現が増加するmiRNAと様々な疾患との関与が報告されており、当研究室でも、標的遺伝子であるIKKαとmitogen-activated protein kinase phosphatase-5(MKP-5)を介し、miR-223がヒト歯肉線維芽細胞における炎症性サイトカインの発現を増加させることを報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度予算の大半をmRNA発現レベルを解析する為に行うReal-time PCRの試薬に使わせていただき、研究を行うことができた。 ODAM遺伝子発現と miRNAの関連性については、現段階でいくつかの検証を行っており、miRNAは標的遺伝子の3’-UTRに結合し、ヒトODAM遺伝子の3’-UTRにmiR-200b、miR-223が結合する配列(Seed配列)が見出された。さらに、TNF-αまたはIL-1β刺激に対するODAM遺伝子転写に関与する細胞内シグナル伝達経路についても解析し、複数の経路中に上記のmiRNAの標的遺伝子となり得る因子が存在することが判明した。 消耗品(プラスチック器具)の中でいくつか納期未定のものがあり、当初購入を予定していたものを買うことができず、一部次年度へ繰り越すこととなってしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
ODAM遺伝子発現と miRNAの関連性については、すでにいくつかの検証を行っており、miRNA-200bおよびmiR-223は標的遺伝子の3’-UTRに結合することが見出された。以前の研究でTNF-αまたはIL-1β刺激に対するODAM遺伝子転写に関与する細胞内シグナル伝達経路についても解析を行った。複数の経路中には上記のmiRNAの標的遺伝子となり得る因子が存在することがわかった。 今後の展望として、miRNA-200bおよびmiR-223はそれぞれ免疫機構や炎症に関連することから、歯周病の発症、進行にも関与する可能性があると考え、本研究ではmiR-200bおよびmiR-223がODAM発現に及ぼす影響に焦点をあて、miRNAと歯周病の関係について解明していきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験で使用する消耗品(プラスチック器具)の納品時期が未定期間があり、予定していた分が残り、繰り越すこととなってしまった。
|