研究課題
本研究の目的は、1)高齢者の日常生活機能低下にはどのようなパターンがあるのか抽出する、2)高齢者の日常生活機能低下の各パターンと関連する個人要因を解明する、3)高齢者個人の日常生活機能に影響を与える社会環境要因を解明する、の3つである。応募者が所属する日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study: JAGES)が2010年に22市町村約10万人余の高齢者を対象として実施した郵送調査データをベースラインとし、 その後6年間の要介護認定・死亡情報を含む追跡データを用いて、縦断研究を実施した。対象者の死亡前3年間の日常生活機能のパターンは、混合軌跡モデリング法で抽出した結果、5パターンが抽出された。本成果は2022年Age and Ageingに掲載された(共著)。続いて、抽出された日常生活機能の低下パターンに、高齢者の個人要因がどのように関連するのかを検証した。申請者は、高齢者の死亡リスクや要介護認定の発生リスクに関連を持つ「社会参加」に着目した。多項ロジスティック回帰分析を用いて検証した結果、ベースライン時に社会参加している高齢者は、死亡前3年間において死亡の直前まで日常生活機能が自立しているパターンに所属しやすいことが明らかとなった。さらに、この関連は、女性と異なり男性においては、上下関係が発生しやすいグループへの参加者では弱く、比較的若い年代の対象者において関連が特に見られる結果が明らかとなった。本成果は、2023年6月に国際学会(Society for Epidemiologic Research)で発表し、2024年2月Archives of Gerontology and Geriatricsへ掲載された(筆頭・責任著者)。高齢者の社会参加が、死亡前3年間の機能障害が少ないことと関連があることを示すことができた。また、その関連は性別や年齢といった因子によって異なるため、社会参加を促進する施策立案の際に根拠資料となることが期待される。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Archives of Gerontology and Geriatrics
巻: 121 ページ: 105361~105361
10.1016/j.archger.2024.105361