研究課題
本研究の目的は糖尿病に対する遺伝的リスク明らかにし、生活習慣要因などの関連について複合的な視点から検証することである。本年度(2022年度)までに、日本の一般住民コホート研究参加者で遺伝子解析および研究への使用に同意が得られた成人男女14,083人を対象に、2型糖尿病に対する遺伝的リスクを評価した。日本人を対象としたゲノムワイド関連解析の先行研究で同定された2型糖尿病発症に関連する88の一塩基多型(SNP)を選択し、各対象者のSNPデータを抽出して2型糖尿病の遺伝的リスクスコア(genetic risk score: GRS)を算出した。ロジスティック回帰分析により、算出された糖尿病GRSが高いほど、実際の糖尿病有病率が高いことを確認した。また、Cox比例ハザードモデルを用いて、全死因死亡および死因別死亡(虚血性心疾患、脳血管疾患、がん)をアウトカムとした生存分析を行い、ベースライン時における糖尿病の有無による調整ハザード比(HR)および、糖尿病GRSの四分位層におけるHRを評価した。追跡期間中に観察された857例の死亡について、糖尿病の有病が高い死亡リスクと関連することが確認された。一方で、遺伝的な糖尿病リスクと死亡リスクの関連は全死因死亡、死因別死亡ともに明確ではなかった。遺伝子多型により予測できる糖尿病リスクは一部であり、糖尿病と死亡の因果関係を十分に推定できていない可能性も考えられ、慎重な結果の解釈や今後のより詳細な解析が必要と考えられる。
2: おおむね順調に進展している
1万4千人以上の遺伝子多型情報が得られ、各人における糖尿病の遺伝的リスクを評価することができた。また、対象のコホート研究データと組み合わせることで死亡との関連を検証した。糖尿病の遺伝的リスクに対する個別化対処戦略の検討は今後の課題である。
これまでの研究に加えて、生活習慣因子(身体活動、食事等)の調整や層別に分けた解析を行い、遺伝要因と糖尿病との関連に生活習慣要因がどう影響するか、遺伝要因と生活習慣要因の交互作用等を含めて検証することで、糖尿病リスク低減のために遺伝的特性に応じた対処すべき具体的な要因を明らかにすることを計画する。変更不可能な糖尿病の遺伝的リスクに対して、そのリスクレベルや遺伝子型のタイプ別などにおいて「どのような人が」「何を」「どう行う」ことが効果的かといった、具体的で修正可能な個別化対処戦略につながる、新たな研究成果を見出すことを目指す。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (7件)
Experimental Gerontology
巻: 175 ページ: 112135~112135
10.1016/j.exger.2023.112135
Archives of Gerontology and Geriatrics
巻: 108 ページ: 104931~104931
10.1016/j.archger.2023.104931
BMJ Open Diabetes Research & Care
巻: 10 ページ: e002479~e002479
10.1136/bmjdrc-2021-002479
Scientific Reports
巻: 12 ページ: -
10.1038/s41598-021-04324-2
Vaccines
巻: 10 ページ: 1035~1035
10.3390/vaccines10071035
Sleep Medicine
巻: 100 ページ: 410~418
10.1016/j.sleep.2022.09.020