研究課題/領域番号 |
22K21086
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
古川 拓馬 佐賀大学, 医学部, 客員研究員 (50963659)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 遺伝子多型 / 遺伝的リスクスコア / 民族集団 |
研究実績の概要 |
糖尿病に対する遺伝的リスク明らかにするために、日本の一般住民コホート研究参加者で遺伝子解析および研究への使用に同意が得られた成人男女14,083人を対象に解析を実施した。日本人および欧米人それぞれから構築された約100万の遺伝子多型を含む複数のPolygenic Risk Score(PRS)について、対象者ごとのスコアを算出した。各PRSを説明変数、糖尿病有病を目的変数としたロジスティック回帰分析を行い、PRSレベル別の糖尿病有病率のオッズ比(OR)を解析した。また、糖尿病の予測精度としてROC曲線における曲線下面積(AUC)を評価した。 結果として、PRS1標準偏差上昇あたりの糖尿病ORは日本人PRSで2.18、欧州人PRSで1.55であり、対象集団と一致した民族集団(日本人)から構築されたPRSは糖尿病ORが高かった。また、AUCは日本人PRSで0.781、欧州人PRSで0.738であり、日本人PRSは糖尿病予測精度がより高いことが示された。さらに、日本人PRSの最高1パーセンタイルは21.82という際立って高いORを示し、糖尿病リスクが特に高い集団が検出された。 これまでの遺伝子関連研究の多くは、欧米人集団を対象としたデータ解析に基づいているが、本研究により糖尿病に対するPRSの使用にあたっては民族による違いを考慮すべきであることが示唆された。糖尿病では特に、日本人などのアジア系集団と欧米人では発症や重症化のメカニズムが異なることも示唆されており、効果的な予測や予防のためにはそれぞれの集団の特徴に合わせたPRSや対策が必要だと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、1万4千人以上の遺伝子多型データおよびコホート研究データを組み合わせて解析を行い、糖尿病の遺伝的リスクを民族差に着目して評価した。本研究成果を論文にまとめ、既に学術誌に投稿しているが、現段階で論文受理には至っていない。査読過程で論文の質を高め、本研究の成果物として公表することを今後の課題とする。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の成果を論文として学術誌に掲載することを第一の課題として推進する。 今後の研究発展として、遺伝要因と生活習慣要因(身体活動、食事等)の関連を含めた解析等により、遺伝的特性(リスクレベルや遺伝子型のタイプ)ごとに、より効果的で修正可能な個別化対策戦略を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画書で計上していた「論文掲載費」について、既に論文投稿中ではあるものの、現時点でアクセプトまで至っていない。次年度での使用を計画し、成果物としての論文を公表する。
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