研究課題/領域番号 |
22K21096
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
安藤 雅行 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構(BKC), 研究員 (10963465)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 思い出想起支援 / 対話支援 / 深層学習 / ヒューマンコンピュータインタラクション |
研究実績の概要 |
この研究は,高齢者の認知機能支援のための対話システムの開発を目的としている.2022年度では深層学習モデルに介護スタッフと高齢者との会話データを学習させることで,介護スタッフの会話パターンを学習した言語モデルの構築に着手した.また,ユーザが対話システムに親近感や使用意欲を持てるように,自身の家族と会話している状況を再現する要素を検討し,対話システムへの組み込みを行なった. 介護スタッフの会話パターンを学習した言語モデルに関しては,深層学習モデルGenerative Pre-trained Transformer 2(GPT-2)に,介護スタッフと高齢者との会話データを学習させ,介護スタッフの発話パターンを学習した対話モデルの構築に着手した.なお,介護スタッフと高齢者の会話データは外部医療機関より提供を受けた.また,高齢者を含めた「個人の過去に関するエピソード」と「エピソードに関連した発話パターン(話題として話し出す部分)」との対を追加で学習させることでエピソードを元にした話題生成を行うモデルを構築した. ただし,上記のアプローチについて,学習に使用したデータの利用制限により,一部のモデルの構築・それに関する成果報告等は中断している.そこで,回想法を含めた思い出想起に関する文献のサーベイを実施し,回想法を想定した会話ルールを作成,ルールに基づいてGPTの発話をプロンプトで制御することで,高齢者への回想法を実現するようアプローチの修正を行った. 自身の家族と会話している状況を再現する要素に関しては,システム利用者が自身の家族と会話しているような親近感や親しみを感じるための要素の検討を行なった.要素による対話システムへの印象の影響を検証した実験では,「要素あり」のほうがなしと比較して親近感や対話意欲の向上が得られることがわかった.研究成果はHAIシンポジウム2023で報告を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
深層学習モデルの学習に利用予定であった高齢者と介護スタッフの会話データについて,当初予定していた外部医療機関からのデータ提供・利用が一時中断し,また,新型コロナウィルスの感染拡大により,高齢者向け介護施設との連携も中断してしまい,計画していたアプローチの実現が難しくなった.そこで,対話モデルとしてChat GPTにも活用されているGPT3.5モデルを採用し,あらかじめルール化した回想法の会話パターンになるようプロンプトでモデルの発話を制御するアプローチに修正を行った.また,2023年2月より,高齢者向け介護施設と連携が再開したため,高齢者を対象としたデータ収集やシステムの調査に向けた準備を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
対話システムの構築を進めていく.アプローチの変更により多少の遅れが見られるが,深層学習モデルをGPT3.5モデルに更新したことで学習にかかるコスト・時間が大幅に減らすことができ,遅れた分についてはカバー可能であると考えている.また,介護施設との連携により,高齢者や介護スタッフからシステムについて使用感や印象などのフィードバックを定期的に受けることで,より現場に適した改良を行っていく予定である.
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