研究課題/領域番号 |
22K21099
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
山崎 晃 川崎医科大学, 医学部, 助教 (70963354)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 液-液相分離 / lncRNA / iPS細胞由来運動神経 |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral Sclerosis; ALS)は、上位・下位運動ニューロンが選択的かつ進行的に変性・消失する神経変性疾患である。病理機序は不明で、家族性ALSの多くでRNA結合タンパク質をコードする遺伝子に変異をもつ。これらは複数のRNA等と凝集し、液-液相分離と呼ばれる膜を持たない集合体を形成する。近年、液-液相分離の骨格として特異的なノンコーディングRNA(ncRNA)が働くことが明らかになってきた。ALS患者由来の運動神経細胞では液-液相分離であるストレス顆粒が異常形成されるものの、関与するncRNAについては不明である。本研究では、ALSで発現量が変化しているncRNAに着目し、(1)ALS患者のiPS細胞から運動神経細胞を作製し、(2)候補ncRNAのノックダウンを行い、(3)ストレス顆粒の異常形成による細胞死への抵抗性を指標にスクリーニングすることで、液-液相分離構造体形成に関わるncRNAを同定し、構造体解消が治療の標的となりうるか検証する。
令和4年度は(1)についてALS患者由来のiPS細胞から運動神経細胞への分化系を検討し、12株で神経細胞への分化を確認した。(2)については候補lncRNAノックダウン用ガイドRNAsデザインを概ね完了した。(3)に関しては液-液相分離を検出するためのマーカー分子の免疫染色系を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究計画では次の3つのステップで実験を進めている。(1)ALS患者のiPS細胞から運動神経細胞を作製、(2)候補ncRNAに対するノックダウン系の樹立、(3)ストレス顆粒の異常形成による細胞死に抵抗性を示すncRNAのスクリーニング。 それぞれの進捗状況について、 (1)ALS患者由来のiPS細胞から運動神経細胞への分化系を検討し、12株で神経細胞への分化を確認した。このステップは順調に進展している。(2)ALS患者では特有のRNA発現パターンが報告されており、そのうち有意に発現量が変動しているlncRNAについて、CRISPR/dCas13システムを用いてノックダウンするために、それぞれのガイドRNAをデザインした。さらに、(1)で作製した神経細胞からRNAを抽出し、発現量が変化しているlncRNAを探索している。このステップは、ノックダウン系の構築が全株では完了していないため、やや遅れている。(3)では、液-液相分離を検出するために、その構成要素であるTDP-43およびFUSタンパク質の免疫染色系を構築した。このステップは当初の計画では次年度行う予定であったため、当初想定以上に進展している。 以上から、本課題の研究状況はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は引き続き研究計画に従って下記の方針で研究を進める。 ・候補ncRNAに対するノックダウン系の樹立について、上期に集中的に取り組み完了させる。 ・ストレス顆粒の異常形成による細胞死に抵抗性を示すncRNAのスクリーニングについて、ストレス顆粒の形成は酸化ストレス処理によっておこない、候補ncRNAのスクリーニングを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて試薬類の製造・輸送が遅延したため、一部実験のスケールダウンや研究着手順の調整により対応した。全体の研究計画自体への影響は軽微に留まったが、上記理由により経費の使用時期が当初予定から変化したため、次年度使用額が発生した。次年度使用額は培地・分化誘導試薬等の購入およびRNAsequence解析に使用予定である。
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