本研究は、乳がん術後リンパ浮腫患者を対象に、超音波診断装置で皮下組織におけるリンパ液貯留状況を判定することを念頭に、その基礎段階として、超音波画像解析技術を用いて、リンパ液貯留を示す画像の特徴の抽出を試み、その精度を解析した。 2022年度は、研究代表者の所属機関の生命倫理審査委員会に対して、実験実施の承認を得るための申請を行ったが、承認を得るまでのプロセス (書類の修正等) において、当初予定していたよりも多くの時間を要した。 2023年度は、被験者のリクルート・実験を実施し、新たに8名の被験者のデータを収集した。これまでに集積したデータと統合し、解析を行った。その結果、仮想体積を用いたフラクタル解析の”complexity"が、皮下組織のリンパ液貯留の有無の検出に有効な指標であることを、新たに発見した。 将来的には、超音波診断装置のみでリンパ浮腫の皮下組織の水分貯留状況を簡便に判定できるプログラムが実現することにより、現在の浮腫の状態をリアルタイムに的確にアセスメントし、その状態に合わせた治療・ケアを選択することが可能となる。本研究の研究結果は、そのための基礎データになることが期待される。
|