本研究の目的は、地域高齢者の日常の発声の機会とオーラルフレイルの実態を調査し、両者の関連を明らかにすることである。前年度は発声の機会に関する調査用紙の作成と、舌圧、オーラルディアドコキネシス、咀嚼力、発声持続時間、発声音量の測定技術を学修した。プレテストを行い、安全かつ効果的に実施できるよう調査方法を検討した。 本年度は、対象とした通所事業所に通う高齢者60名に調査を行った。対象者の平均年齢は83.9歳、男性19名(31.7%)、女性41名(68.3%)だった。舌圧の平均は21.5kpa、オーラルディアドコキネシス(ta/秒)の平均は4.6回、咀嚼力(咀嚼チェックガムの色度)の平均は18.6だった。 舌圧・オーラルディアドコキネシス・咀嚼力の3項目の該当数で分類すると、0項目(該当なし)が6名(10%)、1項目該当が21名(35%)、2項目該当が30名(50%)、3項目該当が3名(5%)であり、9割の高齢者にオーラルフレイルもしくはオーラルフレイルのリスクがあることがわかった。該当なしの6名は、該当ありの54名よりも、人との会話や人以外(仏壇やペットなど)との会話が多かった。また、発声持続時間や発声持続時間あたりの発声音量が高く、発声の機会は、口腔機能や発声機能に影響する可能性が示唆された。しかし、該当項目数に限らず、歌う、テレビに向かって声を出すなど、1人で行う発声の機会をもっている高齢者も多いことがわかった。今回は対象者数が少なく、日常の発声の機会とオーラルフレイルとの関連について、十分な比較には至らなかった。今後、対象者数や測定項目数を増やし、調査の精度を高めることで、日常の発声の機会とオーラルフレイルとの関連をより明確に示すことができると考える。
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