近年、組織が社会全体にどのような良い影響を与えるか、またどのような社会を目指すかという社会的存在意義(パーパス)に基づく組織運営が注目されている。この背景のもと、本研究では研究者らが開発した「仕事が組織のパーパスにつながっている」という認知を測定する「仕事-組織パーパス結合感尺度」の短縮版を開発し、看護職の仕事-組織パーパス結合感を高める環境的・心理的要因を探索することを目的とした。 最終年度には、病院看護職を対象に仕事-組織パーパス結合感尺度の短縮版を作成するための調査を実施した。216人のデータを分析し、19項目の原版と同じ4因子構造の妥当性・信頼性が維持された10項目の短縮版を得た。次に、短縮版尺度を用いて、前年度までの文献レビューに基づいて選定した要因変数を含む質問紙を作成し、調査モニターに登録している全国の看護職を対象に調査を実施した。2289人のデータを分析した結果、仕事-組織パーパス結合感は、非病院施設勤務の方が病院勤務に比べて有意に高く、また、中小規模病院に比べて大規模病院で有意に高かった。さらに、上司のオーセンティックリーダーシップや権限委譲といったマネジメント行動が、仕事-組織パーパス結合感を高める可能性が示唆された。 看護職が自分の仕事と組織の社会的存在意義とのつながりをどの程度認識するかは、組織規模や上司の態度・行動によって異なる可能性が示され、組織がその社会的存在意義を具現化し、職員にその意義を感じさせるための方策を検討する上で重要な示唆を与える。今後、さらに分析を進め、結果を公表していく。
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