研究実績の概要 |
本研究では、同一双極性障害患者のうつ状態期(n=30)、寛解期(n=30)、健常者(n=30)の血漿を用いて血中脳由来エクソソーム内のトランスクリプトーム解析を行う。うつ状態期と寛解期の比較を行い、有意に発現レベルの変動が見られた転写因子に着目し、双極性障害の抑うつ状態と希死念慮を反映する転写因子の分子生物学的な機構をPathway analysisおよびgene ontology analysisにより探索する。 現在、双極性障害のうつ状態と寛解状態の血液サンプルを同一患者で30対収集する予定のうち、27対が収集済みである。予定よりも検体収集に時間がかかっているため、他施設においても収集を開始している。
収集の間に研究実施者が保有するうつ病40名、双極性障害15名の血中脳由来エクソソームトランスクリプトームデータセットにおいて有意に発現量の差を認めた195遺伝子に着目してgene ontology解析及びpathway解析を行った。結果、gene ontology解析で最も高いオッズ比は14.37(Translation Initiation Factor Activity, adjusted p-value, 0.003)であった。この遺伝子オントロジーに関連する遺伝子は、EIF3M、EIF5、EIF6、MTIF2、EIF3Dの5つであった。パスウェイ解析で最も高いオッズ比は22.47(Sumoylation by RanBP2 regulates transcriptional repression, adjusted p-value, 0.03)で、関連する遺伝子は、HDAC1とRANの2つであった。また、この195遺伝子を用いてPLS-DA解析及び機械学習のsupport vector machineを行うことで、うつ病と双極性障害を2群に分けることができた。
|